いやー、積みも積んだり20年以上(^_^;)。奥付は平成7年5月。うーむ平成の間に読めてよかった。まだ積んでる本いっぱいあるから5月までに何冊消化できるだろうか…。
坂田忠春・三津子は結婚7年目の夫婦。忠晴は会社でも重責を任されて同期の中でも出世頭。そんな忠春に献身的に尽くす三津子は、それが当たり前だと思っているし、7年たっても忠春の事が大好き。外から見れば理想の夫婦。しかし忠春の仕事の忙しさで、だんだん三津子が壊れていく。
三津子は忠春の為に毎日夕飯を作って待っている。忠春は早くても10時過ぎ、接待があった日は午前様になる事もしばしば。土日も仕事や接待ゴルフでほとんど家にいない。どんなに遅く帰ってきても6:45に起きて7:40には家を出る。大好きな旦那さんとせっかく一緒になったのに、一緒にいる時間、会話をする時間が全くない。忠春も夕飯を作らなくていい、待たなくていいといっているのに、三津子は悪気なく大好きな旦那さんの健康を心配して忠春の世話を焼く。
これは重い。限りなく重い。お互いに嫌っているわけではない。むしろ三津子も忠春も想い合っている。でもそのベクトルがお互いずれている。そして三津子は少しずつおかしくなっていく…。
思い込みの激しい三津子は確かに問題だけど、元をただせば仕事大好き忠春が一番の元凶。最近はそうでもないけど少し前はこういう男は多かった。家庭の為といいつつ、実は仕事(場)が大好きな男たち。家庭を顧みないのを「家の為」「家族の為」という大義名分で、家庭生活を犠牲にする。そんなことを40年近くしていて、確かに会社では出世をして安定した収入を得、老後の蓄えと安心を手に入れた頃、定年退職をして家庭に居場所がない。「パパが頑張ってくれている」その言葉だけが家庭との絆。やりたいことは定年退職後にすればいい、と言っている人に限って、別にやりたいことはなくて、結局仕事をしているのが楽しい男たち。
かといって、収入はそこそこ、いつも定時に帰ってきてダラダラしている旦那がいいって思っている奥さんも決して多いわけではないでしょう。要はバランスの問題。忠晴も三津子も真面目過ぎた2人の悲劇です。
人が人を好きなるのって、コップに水を溜めるのに似ているなと思います。
目の前にお互いコップを置いて、あんなとこが好きこんなとこが好き、といっては水を注いでいきます。ちょっと嫌いなところがあると抜いてみたり。そんなことを続けて、コップの水が溢れたところで告白をします。相手が同じくらい水が溜まっていれば"相思相愛"ってことですが、大体そういう事って稀で、どちらかが多くてどちらかが少ない。 結婚をしても"コップに水を溜める"作業は続きます。
ただ結婚後の水を溜める作業は、恋人同士の時と違って一緒に生活をするから"抜く作業"も頻繁になります。勢い、抜き過ぎて空っぽになってしまったり(^_^;)。
だからコップの水は半分くらいをキープするのがちょうどよいと思っています。
嫌な事をみつけたら、それを穴埋めするくらいの良いところを無理しても見つける。それが長く続くコツかもしれません。
あれ、感想になっていないや。
軽い語り口調の新井素子作品、サイコホラーでも考えさせられちゃうっていうのはらしいといえばらしいか…。
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