白石雅彦著・双葉社。
「「ウルトラQ」の誕生」「「ウルトラマン」の飛翔」「「ウルトラセブン」の帰還」「「怪奇大作戦」の挑戦」に続く、円谷プロ盛衰記第5弾。
60年代末、ウルトラセブンが終了し怪獣ブームが去り、世は妖怪ブーム、そしてスポ根ブームと、怪獣ブームは過去のものとなっていました。そんな状況でも、第1期ウルトラシリーズは再放送され、バトルシーンを再編集した「ウルトラファイト」、後半はアトラクションの着ぐるみを使った怪獣ごっこ的内容でしたが、子供たちに人気でした。
円谷プロダクションは新たなウルトラマンシリーズを作るべく企画を進めていました。
1971年4月2日、第1話「怪獣総進撃」放送。第2話「タッコング大逆襲」との前後編。監督は「ゴジラ」の本多猪四郎という力作でした。
「帰ってきたウルトラマン」放送の翌日、NET(今のテレビ朝日)で「仮面ライダー」第1作が放送されます。半世紀続くコンテンツ、ウルトラマンは難産の末の第2期スタート、仮面ライダーはまさにその初回が1日違いで観れるというすごい時代。ここから第2次怪獣ブームが到来します。
当時私は小学校2年生。ウルトラQ、ウルトラマンは再放送で、セブンは本放送から観ていましたがまだ2歳~3歳と小さく、本放送で意識して第1話から見た初めてのウルトラマンでした。
巨大ヒーローものは、ウルトラマン、セブンの影響もあり耐性があったのですが、翌日に始まった悪の組織に拉致されて心ならずも改造されてしまう等身大ヒーロー「仮面ライダー」の方が衝撃的でした。
ウルトラマンは、ハヤタに命を預け一体になり、帰ってきたウルトラマンは郷秀樹に勇敢さに心を打たれ一体化する。自分から望んでいないにせよ、少なくともヒーローに認められて超能力を身に付けるけど、本郷猛は、組織の手先として改造人間にされる。
力加減がわからなくて、ドアノブを壊し、コップを割ってしまう。その強い力に驚き戸惑う主人公というのは斬新で、10話までの怪奇色の強かった旧1号編は今でもかなり好きです。
同時期に始まった2つのヒーローものは、ウルトラシリーズというアドバンテージと、仮面ライダーの怪奇色が子供には刺激が強すぎたせいで想定よりも視聴率が伸びず、帰ってきたウルトラマンに軍配が上がります。
しかし、明るい2号ライダーが登場、変身ポーズが小学生を中心に大いに受け「変身ブーム」が始まります。子供には、巨大ヒーローのカタルシスよりも等身大ヒーローごっこの方が受け入れられやすかったという状況があったのかもしれません。
私も両方見ていましたが、ウルトラマンより仮面ライダーやキカイダー、イナズマン、バロム1の方が好きになっていました。
だだ、帰ってきたウルトラマンのダークなお話し、特に「怪獣使いと少年」はリアルタイムで観て、いまだに心に残っています。
昨日も書きましたが、この頃から一般ドラマの方が面白くなり、特撮物はほぼ卒業していました。
ウルトラマンシリーズは、子供向け番組といいつつ、特に帰ってきたウルトラマンまでは、社会風刺を多く含んでいるお話しも多くあり、傑作が多いと思います。
それは、作り手側が単に表面上の派手さだけに捕らわれず骨太の脚本をよしとしていた結果で、そういった土台が、半世紀を超えて鑑賞に堪えられる作品になっている所以であると思います。
この中で「ミラーマン」誕生についても触れられています。
「帰ってきたウルトラマン」と並行して、「ミラーマン」「ジャンボーグA」の企画を進める円谷プロ。しかしながら、なかなか制作決定に至らなかった中、フジテレビで進めていた高畑勲・宮崎駿・小田部羊一らの「長くつ下のピッピ」の企画が著作権が取れず頓挫。その穴埋めとして眠っていた「ミラーマン」が急転直下制作決定となった。「―ピッピ」が成功していれば、ミラーマンはなかったというのは皮肉な話です。「―ピッピ」も見たかったけど、運命とはわからないものです。
7月からウルトラマン新シリーズ「ウルトラマントリガー」が放送されます。
前回の「ウルトラマンZ」面白かったので、今回も楽しみです。
三つ子の魂百まで、といいますが、死ぬまでウルトラマン見ちゃうんだろうなぁ(^^;)。

- 作者:白石 雅彦
- 発売日: 2021/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)