篠田節子著・光文社文庫
篠田節子は、何を読んでもはずれがないので、”作家買い”する小説家のうちの一人。といいつつ、ほかにも読む本がいっぱいあったのと、「逃避行」というタイトルから、不倫もの?かと思い、あらすじも読まずいぶん寝かせました(^^;)。
ところが逃避行の相手は、愛犬の”ポポ”。
隣の家の悪ガキが、執拗にポポをいじめ、ある日、鼻先で癇癪玉を破裂させる。驚いたポポは、悪童に咬みついた結果、この悪ガキは出血多量で死んでしまう。
図らずも”人殺し犬”になってしまったポポを、世間も家族さえも保健所送りしようとする。どう考えても原因を作ったのは隣家の悪ガキなのに。。
家族の為に一生懸命頑張ってきた主婦、妙子は、どうしても愛犬を保健所に持っていくことはできず、ある日、ポポと一緒に家出をする。
でも妙子は免許も車もない。自転車でポポを連れて家を出た妙子。当然遠くへはいけない。ヒッチハイクのように運送トラックにのせてもらい、仕事を手伝っていると、配達した荷物を盗まれるところを目撃、ポポは犯人の女性に咬みついてしまう。荷物は無事だったものの、この事件が更に2人(一人と一匹)を追い詰めることに。
流れ流れて、神戸まで行き、使われていな別荘を安く借りることができ、何とか住処を見つけることができた妙子。山の中の生活で、おとなしい家犬だったポポは徐々に野生に帰っていく。
老犬のポポと静かな生活をしようとしていたけれど、山の中の暮らしは楽なものではない。この後妙子とポポはどうなっていくのか。。
私、今までペットって飼ったことがないので、よくわからないことも多いのですが、ペットと暮らしている人の話を聞くと、家族以上のつながり、感情移入をするといいます。
特に、犬は飼い主を裏切らないとか。
もし自分の飼い犬が人を殺してしまったら、自分ならどうするだろう。
悪ガキとはいえ、間違いだったとはいえ、殺してしまっては言い訳はできない。保健所につれていかなければ、そこに住み続けることはできない。
この小説の初出は2002年。今から19年も前になります。今であれば両方の状況をもう少し詳しく調べられて一方的に犬が悪い、という事にならないかもしれないけど、いかに悪ガキとはいえ、子供を殺された親にとっては、何のお咎めもなく隣で暮らしていられたら悶々とするに違いありません。
妙子の取った行動は、単に愛犬を守るというだけでなく、そんな家族同様の愛犬すら簡単に切り捨てようとする家族との訣別だった。
妙子の行動も已むに已まれぬものだけど、一番の問題は、家族が妙子の気持ちを分かってあげていないことだと思います。
家族の気持ちに寄り添うのってやっぱ大切です。
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