2021年10月10日から12月12日までTBS日曜劇場枠全9話。昨日最終回を迎えました。
映像化は、73年の映画、74年のTVドラマ、06年映画版、20年のnetflixアニメ版に続き、5回目。もっとも原作準拠なのは73年映画版のみで、74TVドラマはかなり改変、06年映画版に至ってはちょっと沈没、ネトフリのアニメ版は、登場人物総入れ替えで、逃げ惑う庶民側の物語と、だんだんおかしな方向になってます。
今回のTVドラマ版は、原作からは田所博士のみが共通の登場人物で、それ以外はオリジナルキャラ。日本沈没を政府の側から描くという原作同様の物語ながら、73年版とも大きく異なる。
73年版、74年版との大きな違いは、やっぱ”軽さ”。登場人物が全員軽い。日本が沈没するのに真剣に考えてる風があまり伝わってこない。田所博士は、昔からおかしな人でしたが、香川照之の田所博士は変人じゃなくて変な人。原作、73年版の田所博士は愛する日本の沈没現象を発見してしまったことを後悔していた。”香川”博士はこの日本への愛情があまり感じられなかった。
今時、政界の黒幕なんていう設定が受け入れられないから渡老人の出番はなかったけど、日本沈没の物語の白眉は、この渡老人が「日本民族の将来(D2基本要綱)」として、3人の知識人に不眠不休でまとめ上げさせたものを、山本総理(丹波哲郎)に渡すシーンです。
「日本民族の将来」は3つに分けられていました。
ひとつは、日本民族の一部がどこかで再建国する為に
もう一つは、散らばった日本人が各国に帰化する為に
最後は、どこにも受け入れられなかった人々の為に
そして、これはあくまでも参考意見だが…という事で、もうひとつ、三人の一致した意見書も同封されていました。
その意見書は、「このまま、なにもせんほうがええ」と書いてありました。
日本人は滅びゆくこの国土と運命を共にする。
為政者としてそれは選べない。ただ、総理はそれを聞いて涙する。
日本沈没は、単なるパニック映画ではなくて、日本人としてのアイデンティティに直接訴えかける物語のはず。
それが今回のドラマはあまり見えなかった。
海底の異変や地割れ、浸水のCGは結構よかったんだけど、根本的に脚本が残念。
そもそも、日曜9時枠でやるドラマじゃない。
何度も映像化されるのはクリエイターの琴線に触れる物語なんでしょう。でもやればやるほど73年版がいかに名作かが再確認されます。
これは庵野監督に『シン日本沈没』を作ってもらうしかないですね。庵野監督も好きらしいし。いや、タイトルに”シン”は付けないで欲しいけどw
73年版と74TV版が今amazonprimeで観れます。見たことない人は是非。