日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「離陸」

離陸 (文春文庫)
絲山秋子著・文春文庫
最近疲れも酷く、目も悪くなり、在宅勤務もあって、今年2冊目と全然本が読めてません。という言い訳。。

主人公は国交省の若手キャリアで、八木沢ダムの現場事務所に派遣されている。
ある夜、主人公のもとに山中から黒人の山男が現れて「女優を探してほしい」という。話を聞くと女優とは、主人公の元カノで名前は乃緒。男はフランス人で乃緒の子供を預かり育てているという。彼女とは別れて数年経っており、当然行方は知らない。しかも彼女から別れを切り出されて彼のもとから去っていったので、知る由もない。そんな奇妙な出会いから、その男、イルベールとメールのやり取りをするようになる。
その後、主人公はフランスのユニセフ本部に派遣されることになり、イルベールと彼の育てる乃緒の息子「ブツゾウ」と交流を深めていくが、乃緒は依然行方不明のまま。手がかりが少しづつ出てくるが、それでも彼女にはたどり着かないどころか、更に謎は深まっていく。

 小説って起承転結があって、ちりばめられた謎が読み終わる時には綺麗に解決するものだと思っていましたが、このお話は、沢山の謎や伏線がほぼすべて回収されません。絲山さんは、2005年芥川賞を受賞した純文学系の作家で、ミステリー作家ではなかったことをすっかり忘れていました。

 よく考えてみれば、人生なんて謎が綺麗に解決するなんてことはまずありません。小説の主人公のように、一つのことにかかり切りになることもできません。そうやって折り合いをつけながら、色々な積み残しをしながら日々生きています。でもそんな毎日の中で、人は確実に成長し、新しいなにかを見つけて生きていってます。
 
 タイトルの「離陸」は、「生きるという事は、空港で離陸の時を待っているようなもの」という意味だそう。「人生とは、離陸の順番待ちの時間であり、生きるものはみな誘導路に並んで自分の番が来るのを待つ旅客機だ」と。
 無駄にあがく物語の多い中、こういう流される物語というのは新鮮。何も解決していないのに後味は決して悪くない。
 不思議な読後感を感じることができる稀有な小説です。
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