奥野修司著・新潮文庫
奥野さんの作品は、
是枝裕和監督の2013年の映画「そして父になる」の原案(参考文献)となった、”取り換えっ子”のノンフィクション。『ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年』
第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞をW受賞した沖縄の女傑、金城 夏子を取材した『ナツコ―沖縄密貿易の女王』
横浜のサレジオ高校で起きた高校生殺人事件『心にナイフをしのばせて』
を読んでいます。
2011.3.11 14:46 東北地方太平洋沿岸を襲った東日本大震災は、津波となって海岸沿いの街を飲み込んだ。
阪神淡路大震災は火災で亡くなった方が多かったが、東日本大震災では、津波でたくさんの人の命が奪われました。
震災後、亡くなった方と思われる幽霊話、心霊現象は、ネット上でも多く報告されています。曰く、駅からタクシーに乗せたお客さんが指示したのは、津波で更地になってしまった場所で、そこに到着すると後部座席にいなかったとか、前を行く車がずっと止まっているのでクラクションを鳴らしたら、運転していた人は、道路を渡る沢山の人を見ていたとか。
そりゃ、1万6千人近くが一瞬にして波に飲まれ亡くなって、ほとんどの人が自分が死んだことすら理解できず、彷徨ってしまう気持ちはよくわかります。
残された人も、昨日まで一緒にいた親や兄弟や子供たちが突然いなくなってしまい、気持ちの整理なんかつくわけありません。
自然災害とはいえ、生き残った人は、「もしあの時、戻っていたら…」とか、「一声掛けておけば…」など、自分を責め続けるといいます。
そんなつらい日々を癒やすのは、亡くなった人の魂しか拠り所はありません。
そんな想いが形になって現れるものなのかもしれません。
知らない人が聞けば不思議な話ですけど、それらの話をしっかり受け止めて上げることはとても大切な事だと思います。
震災後幾度も現地に通い、被災者に寄り添い語ってもらった16の物語。
実際はこれが亡くなった人の数だけある。
奥野さんが見聞きした物語は、一般的には霊的な話なのに不思議と怖さは感じません。
彼岸と此岸との差が曖昧になることで救われる命も間違いなくある。
生きているということは、亡くなった人の想いをも受け止めて、精一杯生きることが何よりも大切だということを強く感じました。
まさに”生かされている”んですね。
生きているとつらいことがいっぱいあるけど、それは試練かもしれません。
がんばって自分も生きていかないといけないなと、思いを新たにしました。