サイボーグ009の物語が創作されて今年ちょうど60年、これまで3回の映画化(アニメ)、3回のTVアニメ、ラジオドラマ、そして今年は舞台などいまだに様々なメディアで展開されており、古参のファンとしては嬉しい。
オリジナルストーリーの小説は、完結編の「2012 009 conclusion GOD'S WAR」を除くと今回初めて(「―超銀河伝説」「Re:CYBORG」のノベライズ除く)。009の新作です。
今回は9人の作家による競作となっています。以下河出書房hpより紹介を抜粋します。
www.kawade.co.jp
●辻真先「平和の戦士は死なず」
テレビシリーズ第1作の名エピソード、同題の最終回を、オリジナル脚本家が自らリメイク!
●斜線堂有紀「アプローズ、アプローズ」
原作屈指の名作「地下帝国"ヨミ"編」後日譚。サイボーグ戦士、誰がために闘う?
●高野史緒「孤独な耳」
003のバレエ公演にともない、001=イワン・ウイスキーが初めて故国に帰郷する。
●酉島伝法「八つの部屋」
ジェット・リンクはいかにして002になったか。ゼロゼロナンバー・サイボーグ誕生秘話。
●池澤春菜「アルテミス・コーリング」
その目と耳であるがゆえに、003=フランソワーズ・アルヌールが出会えた奇蹟。
●長谷敏司「wash」
60年にわたり戦い続けた004=アルベルト・ハインリヒ、過去の亡霊と再会。
●斧田小夜「食火炭」
張々湖飯店を見舞った奇妙な出来事が、006=張々湖を過去へといざなう。
●藤井太洋「海はどこにでも」
火星探査団救難船に潜入捜査中の008=ピュンマは、謎の事故に巻き込まれる。
●円城塔「クーブラ・カーン」
009=島村ジョーたち9人のサイボーグ。彼らは、楽園を築く者たちか。
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サイボーグ009は、原作でも初期と後期は絵柄が変わっているせいか、アニメ化される度にキャラクターデザインが変わっても案外受け入れることが出来ます。
大きく変わったのは、次のキャラ。
007は、私の原体験が旧昭和版なので子供かと思ってたら実はおっさんだったのが最初のショック。
005は、巨漢のヘアスタイルがモヒカンのアメリカインディアン。平成版まではこの容姿でした。ただこの頃から「ジェロニモ.Jrという名前という”アパッチ族”の英雄の名前を継いでいるのに”モヒカン族”の髪型であるモヒカン刈りをしているのはおかしい」という話しが出て、平成版ではモヒカン頭は残しつつ「G.Jr」という名前になり、2012年神山健治監督の『RE:CYBORG』からアパッチ族風の総髪になっており、顔のクマ取りも力を発揮する際に現れるようになる(漫画仮面ライダーの顔の文様出現にも似ている)。
008は、アフリカ人。奴隷商人から逃げたところをブラックゴーストに拉致される。原作から1979昭和版までは原作準拠の当時の黒人戯画的な容姿だったけど、「ー超銀河伝説」から顔立ちがよりリアルな感じに、容姿もバネの利いた、より精悍な感じになった。見た目一番変わったキャラクター。
それぞれのキャラクターに作品によって様々な要素が加わっていますので、受け入れられない人も多いと思いますが、私的には芯の部分が変わってなければOK、むしろ、時代に合わせて容姿を変えるのはこの作品の新しいファンを作って次代に繋ぐという役目として必要な事だと思います。
勿論自分的に好きなデザインはあります。1968版の島村ジョーはかわいくて好き。1979版は原作準拠の黄色いマフラー&赤いスーツになって良し。平成版は全体的に石ノ森テイストを強く残していて好きです。008は当時のステレオタイプの黒人イメージより今の造形が良いですね。
「サイボーグ009」の物語は「地下帝国ヨミ編」で完結していると思っており、今回のトリビュートも含めその後の作品はすべてインサイドストーリーと思っています。完結編まで紡げなかった石ノ森の無念をこのような形で009物語を語り続けることに意義があると思っています。
とはいえ、今回の「サイボーグ009トリビュート」はあくまでも誕生60周年のイベント企画であって、009ファンでなければ楽しめず、009入門書ではありません。
そういう意味で、コアでありながら寛容なファンにはお勧めですが、初心者には楽しめないかも。。