塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本
満島ひかり、岡田将生主演
(一昨日から公開の映画ですのでネタバレはなしで)
同監督演出、同脚本家の法医学ミステリーものの「アンナチュラル」と警察バディものの「MIU404」と世界観が共通の映画ということで、制作発表時から期待していました。
今回の舞台は、東京多摩地区にある大手通信販売サイト、「DAILY FAST」の物流センター。そこに新しいセンター長がふにんするところから物語は始まります。
この新しいセンター長が舟渡 エレナ(満島ひかり)。部下の梨本 孔(岡田将生)は部下のチームマネージャー。
ある日、この配送センターからの荷物を配達したアパートの一室が配送直後に爆発するという事故が起きる。その後続々と同じ物流センターからの配送物が爆発する。爆発物をどこで紛れ込ませたのか?「DAILY FAST」の注文品に紛れ込ませた理由は?犯人の目的は?そして、犯人は誰か…。
司法解剖をする「アンナチュラル」のUDIにメンバーと、「MIU404」の4機捜(第4機動捜査隊)のメンバーがどう絡んでくるのかも両作品を見ていた人には興味深いポイントです。宣伝でも”シェアードユニバース”を前面に謳っていますけど、この宣伝方法は諸刃の剣。私のようなTVシリーズのファンなら絶対観たい作品だけど、観たことない人は、ハードルを感じてしまいかねない。
でもあえて言います。
「アンナチュラル」「MIU404」観ていない人も全然OKだし、これを観て面白いと思った人は「アンナチュラル」「MIU404」を観て欲しいです。アマプラはじめオンデマンドサイトで配信されています。だからと言って事前に観ておく必要もない(観た方がより楽しめるけど)。
今はe-コマースサイトの利用なしでは生活できないほど、社会に浸透しています。
タイトルの「ラストマイル」は、運送用語の「ラストワンマイル」からとられています。「ラストワンマイル」とは、配送センターなどの集積拠点から最終目的地(配達先)までの区間をさしています。
海外からの物流はコンテナで、国内は大型トラックや貨物列車で大量に移動させることが出来ますが、配送センターに届いた荷物はひとつひとつ配達先に届けなければならず、それはいまのところ人海戦術に頼るしかありません。
商品を捌く配送センターも24時間稼働。1秒たりとも止めることはできません。そこでの仕分けもある程度機械化されているものの最終的に頼るのは人の手だったりします。
労働人口はどんどん減る一方で通販利用はどんどん増える。社会にとって今対策をしないといけない大きな問題のひとつです。
確かに前日ポチっとしたものが翌日に届くのは有難い。でもそれで本当にいいのかなって思います。わざわざそんなに速く届けなくてもいいよって思ったりすることもしばしば。
うちなんか基本平日昼間はいないので、曜日指定がある時は休日にするようにしています。
便利になることは良い事ですが、その為に誰かが不幸になっているならば、そこまでの便利は過剰なもの。人の不幸の上になりたつ利便性はいらないと思います。
昔、クリーニングを出し忘れて、本当は3日掛かるところ、1日で仕上げて貰ったことがありました。
行きつけのクリーニング屋さんでご主人も奥さんも知っていたので無理をきいて貰えました。
そういうのって、一見さんだったら無理でしょう。あくまでも人と人との付き合い、信頼関係があることで成り立つ特別なサービスです。それをすべて同じようにサービスする、しかも利用者は送料を負担せず、中間の物流業者皺寄せが来ているというのは異常な状態です。
塚原あゆ子監督×野木亜紀子脚本作品は常にそういった社会的な視点をもちつつ、エンターテイメントの基本も忘れていません。
主演の2人は勿論、もともと別作品で主演をしている人々を短いながら脇役に使うというのは、今予算の厳しいTVドラマやTVスペシャルでは無理で、こういった形での再終結は嬉しい。脇役まで豪華ってまるで幕の内弁当です。
大ヒットして、次のシェアードユニバース作品に繋がってくれるとよいなと思います。