江戸川乱歩賞受賞後第1作。著者の野沢尚は、脚本家として数々のヒットドラマ、映画のシナリオを書かれています。
一番好きなのは木村拓哉、中山美穂主演のフジのドラマ「眠れる森」(1998)。北野武監督第1作「その男、凶暴につき」(1989)も同氏の作品ですが、もともと深作欣二監督で進められていたものの超売れっ子だったビートたけしとのスケジュール調整が上手くいかず深作監督は降板、プロデューサーの奥山和由によって、武が監督をすることになる。北野武監督の誕生です。
その後北野武は現場でどんどん脚本に手を入れていったことで野沢尚は不快感を覚えるが、完成した作品を見て「悔しいけどこれは傑作だ」と北野への複雑な感情混じりの賛辞を送っている。のちに改変前の脚本をもとにした小説「烈火の月」を上梓。これはこれで面白いけど、映画としては「その男―」は野沢尚が認めたように傑作に仕上がっています。
さて、「リミット」ですが、
少年少女の誘拐事件が多発、ある誘拐事件を担当していた婦人警察官の子供も巻き込まれ誘拐される。警察の”縄張り意識”を逆手にとって身代金誘拐事件を成立させる犯人。誘拐は臓器移植の為に子供たちは海外に運ばれる。警察側と犯人側が等分に描かれて、事件の真相に迫っていく。1998年初刊なので今から27年前の作品ながら、TVドラマの名作を作ってきた野沢尚ならではの二転三転するストーリー展開は読んでいて飽きなかった。
男が「家族を守る」といっても、それは役割としてそう思うことが正しいという一般常識からですが、母の「子供を守る」(夫は守らない)思いは、十月十日、自分の器官で育てたという本能的なもの。これに男性は勝てるわけありません。
母は強し、です。
野沢尚は、2004年6月、事務所マンションで首吊り自殺。享年44。
まだ若いのに、色々と制作側にもみくちゃにされて疲れてしまったんですかねぇ。
今も生きていたら、ヒットメーカーになっていただろうか。
惜しい。
