川崎アートセンターで「5時からシネマ」という企画が本日から始まりました。夕方5時から映画を上映する会。第1回の今回は"5時"と"ゴジ"をかけて、長谷川和彦監督の2作を上映。長谷川和彦監督、通称"ゴジ"って事ですね(^_^)。
本日は監督デビュー作の「青春の殺人者」。1976年のキネマ旬報ベストワンに、デビュー第1作で選ばれた名作です。DVD化されているとはいえ35年も前の作品だから今となっては観ていない人も多い。今回は久々の上映で、私もフィルムで観るのは初めてでした。
川崎アートセンターでは何度か映画を観ていますが、映画のセレクトが結構マイナーなものが多く、ただでさえ113席と少ない席数なのにだいたい観客はその半分以下の事が多い。ところが今回は、ほぼ満席、長谷川監督の影響力はいまだ衰えていない事を実感。
長谷川和彦監督は「青春の殺人者」完成後、沢田研二・菅原文太主演で「太陽を盗んだ男」を撮りその後32年間1本も監督作を世に出しておらず、まさに幻の監督。人前に出ることも少ない為今回のトークショウは、作品を観るのと同じくらい楽しみでした。
トークショウには、長谷川監督と主演の原田美枝子さんが来場。映画の中の17歳の原田さんは勿論すてきだけど、実物はもっとすてきでした。35年、本当にいい歳の取り方をしています。
聴き手は長谷川監督日活時代の撮影所の先輩であるスクリプター白鳥あかねさん。この人がいたから貴重なトークショウが実現できたのでしょう。
話は「青春の殺人者」の撮影秘話が次々と出てきます。
監督になる以前、数々の脚本を執筆し注目を浴びた長谷川監督が、第1回監督作品である「青春の殺人者」は田村孟さん脚本。何故?という問いに、
「俺は脚本が書きたくて映画の世界に入ったんじゃなくて、"監督"になって作品を出したかった。脚本にも関与する監督がいるというのも知っていたけど、プロのシナリオライターに書いてもらったものを撮りたかったから」と。根っからの監督なんですね。。。
以下はDVDの監督インタビューにもなかったこと。もう35年前のことだから時効ってことで・・・。
映画の中で出てくる機動隊の服は、日活からタダで借りたもの。それを着て道を封鎖していると民間車が次々止まる。本当の機動隊じゃないのにね。??つまり、長い渋滞を作っていた車列は、エキストラではなくて一般の車を撮影したらしい。
ラストシーン、スナックに火を付け炎上させるシーン。実物のセットを燃やしたいが、消防署から許可が下りない。結局無許可のまま撮影開始。セットは消防署の眼の前にあり、炎上している建物があるのですぐに駆けつけるが、長谷川監督は、必要なカットを撮り終えるまで消防士の侵入を食い止める。全カット撮影後、消防が入り無事消火できた。その消化の様子が、最後のシーンなんですが、というわけであそこに映ってる消防士は、本物の消防士ということ…。
こういうゲリラ的な撮影は今は許されないだろうなぁ。当時も決して許されることではなかったでしょうけど、この映画は、なんかそういう作り手側の若さ、勢いが感じられる映画でもあります。
原田美枝子さんは当時17歳。代々木高校1年生。撮影場所の千葉にスタッフは泊まり込んでいたけど、朝まで撮影してそのまま電車に乗って通学していたらしい。
17歳にして蛇淫、大胆な演技惜しげもなく肢体を晒す度胸。ぱっと見かわいい女性なのに、本当に胆の据わった女性。こういう前向きな気持ちが、これまで第一線で活躍できている理由でもあるのだと思います。
他にもいろんなお話を聞く事が出来ました。
最後に長谷川監督からひとこと。「復帰したら次々映画撮ると思うんだよね。『知恵と金』くれ!」だそう。原田さんも第3作期待していますということでした。
原田さんの一言は「今映画がなかなかヒットしませんが、音楽が無くならないように、映画もなくならないと思います。ですから皆さんいっぱい映画観てくださいね」との事でした。
その後、スタッフさん作ったおでんを肴にお二人と観客有志(結構な人数。30人以上はいたな…)で懇親会。500円で手作りのおでんと酒飲み放題。なんてリーズナブル!長谷川監督の周りには映画青年が取り囲み、原田さんにも人だかり。一緒に映画を観た見ず知らずの人ともお話が出来ていい会でした。
そこで、原田さんからポスターについての秘話を。
DVDジャケットに使われていたのは青い方。赤い方を観たのは今回が初めてでしたが、単なる色違いかと思っていたら、役者の順番が異なっています。
青い方は、
原田美枝子
水谷豊
■
市原悦子
■
桃井かおり
白川和子
江藤潤
■
内田良平
地井武男
赤い方は、
水谷豊
原田美枝子
原田さんと水谷さん入替。
■
市原悦子
■
江藤潤
白川和子
桃井かおり
江藤潤さんと桃井かおりさん入替
■
内田良平
地井武男
内田さんと地井さん入替
という風に。当時映画の出演ロールや、こういったポスターの順番がスターにとって重要だったんでしょうね。
最後原田美枝子さんの著作にサインを戴き、お開き。唯一難を申せば撮影と握手が制限されていたのが残念でした。
それにしても、映画好きの私にとって、新百合ヶ丘に住んでいて本当に良かったと思える企画でした。これからも良い企画を楽しみにしています。
=追記=
DVDのジャケットを観てみると、ジャケットは青い方なのに、
水谷豊
原田美枝子
の順番になっている。何故なんだろう。。。
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