花粉症がいまだ治らずボーっとする日々。全然外に出る気になりません。で、3日前に衝動買いしたこの本を読む。
映画って、2時間程度の作品の為に、企画から考えれば何年、ものによっては十何年という時間を費やし、いざ撮影にかかるとたくさんのスタッフ、俳優さんが数カ月の期間拘束され、撮影後も編集や音入れや、勿論宣伝など、大変な労力の結果私たちの眼に触れることになります。ここ1カ月、そんな話を直に聞いたものだから、その苦労たるや大変と一言で片づけられないものがあります。もっとも、そういうことを気にしながら観るのはいけないことで、完成した作品にのみ注目すべきというのは、わかるのですが、それでもそういったバックグラウンドを知ってしまうとそれ抜きでは語れないのも事実。
この本は、さまざまな理由で公開が中止されたり、公開後様々な物議をかもした映画46本を紹介した本。知っている話が殆どでしたが、それにしても問題作っていっぱいあるものです。勿論この中には、劇場公開はされなかったけど、DVDでは観れる作品とか、劇場公開はされたけどその後別のメディアでは発売されず、今となっては幻の作品となったもの、しばらく封印されていたけど、最近になってDVD化されたものなど、興味深い作品が続々と出てきます。
この中で一番観たいのは、やっぱ「黒部の太陽」です。石原裕次郎の「この映画はでっかいスクリーンで観てほしい」の一言で、石原プロモーションがソフト化を渋っている。たまに上映会が行われているようですが、もともと3時間15分の作品が1時間も短縮されたバージョン。石原裕次郎の気持ちはわからないではない。当時の5社協定の壁を破り、自ら大けがをしながらまさに命をかけて作った映画だから特別に思うことも大切だし、遺された人々がその遺志を継ぐことも大切。それでも、映画というのはたくさんの人の眼にふれてなんぼなんじゃないでしょうか。
1968年公開初年に733万人という動員を記録、学校の講堂で教育の一環として上映したりして当時小中学生だった人はそれで観ている人もいるといいますが、残念ながら私はそれにも間にあっていません。2年前にSMAPの香取くん主演でTVドラマにもなりましたが、観たいのは石原裕次郎と三船敏郎のこの映画。
最近は家庭にあるTVも40インチを超える大きなものが多く、充分迫力のある映像をうちでも楽しめます。どうしてもDVDやBlurayなどのソフト化が×なら、劇場限定で公開をしていただけないものだろうか。
宝物を大事にしまっていたら、どこにしまったか忘れちゃたとか、腐ってしまったとかいう話はよくあります。幻の作品として語り継がれるよりも、何度でも公開して、いつまでも語り継がれる作品が本物の名作です。
出水の画面は、もしかしたら今回の大津波を彷彿とさせ、更に封印の扉は硬く閉ざしてしまうかもしれません。しかし、それを越えて大工事を完遂させた人の力を示すことも被災された皆さんに勇気を与えるんじゃないかとも想うのです。。。
ましてや映画は俳優だけのものではなく、制作に関わったすべての人のものだと思います。故 熊井啓監督も完全版の公開を望んでいるようですし、石原プロモーションの英断を期待します。
- 作者: 沢辺有司
- 出版社/メーカー: 彩図社
- 発売日: 2011/04/15
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