昨年末、河出書房新社から発売されたKAWADE夢ムックシリーズの一冊。7月に急逝された小松左京の特集MOOKで、生前の対談や、小松左京論等を一冊にまとめたものです。
小松左京作品は、高校〜大学位に貪り読みました。角川文庫で出ていたものを中心に、ハヤカワ、徳間の文庫で。その後、ハルキ文庫で再刊される度に改めて買い求めて読んでましたね。
小松SFの中で好きなのは、とにかくスケールの大きなもの。「日本沈没」「復活の日」「果てしなき流れの果に」「継ぐのは誰か」泥酔して起きたら、誰もいなくて、日本に残った人を探す「こちらニッポン…」とかも好き。処女長編「日本アパッチ族」も面白いです。
私にとって、作家買いして間違いのない作家の筆頭です。SFと言えば、荒唐無稽な幼稚なものと決め付ける人はさすがに21世紀も10年以上たつといませんが、私が小松作品を読んでいた80年代でさえ、SFを好んで読んでいるのは「ヲタク」というレッテルを貼られていました。そういう時に心の支えになったのが、小松SFです。小松SFは、時代の延長に何があるのか、あらゆる可能性をフィクションという形で私たちに提示した崇高な文学作品です。しかし、小松左京にはSF関連の賞以外与えられる事はなかった。(当時の初期のSF作家でいえば、半村良が第72回直木賞、第1回泉鏡花賞を受賞しています。もっとも、直木賞は、「雨やどり」という文芸作品ですが。)
結局小松左京という人は、純粋にSF者として、常に軸足をSF文学に置いて生を全うしたように思います。一般に認められる賞を取る取らないが、作家の本質ではないにせよ、どうしても常に「小松左京」とかっこ書き出かかれるような、決して「愛読書は?」と面接で問われた時に胸を張って答えるのはちょっと勇気がいるような状況は、彼のもつ本質よりも数段、いや数十段も評価が低いような感じがするのは私だけでしょうか…。
残念ながら、復刊されていたハルキ文庫も最近は店頭になく、小松作品を読む新しい読者は増えそうにない。どこの出版社でもよいので、、旧作の再刊をして、新しい読者を開拓して欲しいなぁと心から思います。時代を経てもいまだに色あせない小松作品。読んでいない方、日本人なら「日本沈没」は、押さえておくべき必読の書です。

追悼小松左京 日本・未来・文学、そしてSF (KAWADE夢ムック) (単行本・ムック) / 河出書房新社
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