おそらく今回の「七瀬ふたたび」映画化に合わせ、たくさん増刷してるのか、七瀬三部作が店頭に平積みになっています。旧版より活字も大きくなりフレンドリーなもんで、つい購入。
初めて読んだのは高校生の時。以降この四半世紀に3部作を4回は読み直してる。
たびたび映像化(「七瀬ふたたび」だけだけど)されるってのも理由なんでしょうが、「七瀬ふたたび」よりも、「家族八景」の方がずんずんと心に響いてくる。
この話、知らない人の為にちょいあらすじを。
火田七瀬。高校を卒業したばかりの18歳。職業お手伝いさん。彼女が、8つの家庭を渡り歩く(だから八景)連作短編集です。これだけですと「家政婦は見た」的な感じですが、七瀬には心を読む能力があり、一見穏やかな家庭の中にあるドロドロとした感情を次々に覗き見てしまいます。このドロドロさ加減は読んでいて陰鬱な気持ちになります。でもこういう側面ってここまで極端じゃないにせよ、あるような気がします。
"テレパス"としての能力を持っていることをひた隠しにするために、ひとところに落ち着かなくても怪しまれず、深い関心をもたれないように地味に暮らそうとする七瀬が健気で素敵。相手の持っていることがわかるのだから、先回りして相手の望むことをしてあげる。よく気の付くお手伝いさん。これは能力として最高かもしれないけど、悪口(自分に対するものだけでなく)や聞きたくない話も聞こえてくる。特にうら若き乙女に対しては頭の中で全裸にされそれ以上のことも。そんなものを見せられたら相手のことなんて信じられなくなっちゃうね。
私も男なんで読心されたら困るような事を考えてないとは言い切れないんでテレパスには会いたくないかも。
とはいえ、私、基本裏表は少ないと思います。上司だろうとお客さんだろーと自分が正しいと思ったら言いたいこと言う。陰でも悪口言うけど、本人の目の前でもいう。どっちかというと言行一致です。嫌われることもあると思うけどそれはそれ仕方ないと思ってます。(と言いつつ、余計なこと言って悩んだり反省したりすることがしょっちゅうありますけど。)
人間の表と裏、気をつけないとなーということを思い出す為に、何回も読んでいるのかも。
文句なく、万人にお勧めです。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1975/03/03
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