私の中で、内容を考えず作家買いをしてしまう作者さんの一人。特に五十嵐貴久さんの作品は、デビュー作「リカ」が面白くて、以降毎回気がつくと読むようにしています。舘ひろしとガッキー主演でTVドラマになった「パパとムスメの七日間」もこの人が原作。
作家さんって、似た傾向の話を描く事が多いのですが、五十嵐さんは、いくつかのシリーズものはありますが、「リカ」は、ホラー要素の強い作品だし、「交渉人」は刑事もの。「1985年の奇跡」は青春スポーツもの。「TVJ」はアクションと、毎回いろいろな種類の作品を上梓されます。そしてこの「安政五年の大脱走」は、時代劇。
井伊直弼というと、安政の大獄とか、桜田門外の変で有名な幕末の大老。最近ゆるきゃら”ひこにゃん”で有名な彦根藩の藩主です。その井伊直弼は、元々側室の子、井伊家14男として生まれ、17歳から32歳までの15年間を300俵の捨扶持の部屋住みとして不遇の時代を過ごしていました。どこかにいい養子縁組先が無いかと、江戸詰していた時の事、直弼は、一人の女性に心を奪われます。その女性は、南津和野藩の美蝶様。しかし、現在の直弼の身分では、声をかけるどころか話をする事もできません。哀しい想いで彦根に帰る直弼でしたが、30を過ぎた頃、長兄たちが相次いで亡くなり、回ってくるはずのない家督が直弼のもとに。そして、ついに江戸幕府大老にまで上り詰めます。
ある日、直弼は江戸城お勤めの帰り、かつて恋い焦がれた美蝶様と瓜二つの女性に遭遇する。美蝶様との邂逅は24年も昔の事なので、勿論本人ではなく、調べてみると美蝶様の一人娘、美雪姫とわかった。どうしても姫が欲しい直弼は、部下の長野主膳が考えた作戦に乗る。その作戦とは、南津和野に謀反の嫌疑をかけ、江戸詰めの南津和野の藩士51名と美雪姫を捕縛。藩士の命を助けたければ美雪姫に直弼の側室となる事を促すというもの。
とらえられた南津和野の武士と姫は、相模の国の絖神岳(こうじんだけ)山頂に移される。この山は、東北は海、西南側も急峻な崖を上らねば山頂につかない。脱出不可能なこの山頂に幽閉された姫を救うため南津和野藩士が取った作戦は、土を掘って穴を穿つこと…。この脱出成功するか!
とまぁこんな話です。副題の「The Great Escape of 1858」が示す通りあのスティーブ・マックイーン主演の名作「大脱走」(原題: The Great Escape)を江戸時代に置き換えたもの。でも単なる翻案ではなく、更なるどんでん返しと爽やかなエンディングで後味の良い作品になっています。五十嵐貴久作品に外れなしです。
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昔、ご本人から当blogにコメント頂いた事があるのも好きな理由だったりしますww
→http://d.hatena.ne.jp/hee/20050112