百田尚樹著・講談社文庫
映画「海賊とよばれた男」の原作小説ですが、映画が日承丸(日章丸)2世のイラン石油を輸入する「日章丸事件」をクライマックスにしているのに対し、その後の石油精製所と日章丸に続くタンカー製造、そして1973年の石油ショックを契機とした石油連盟からの脱退を描いています。なので映画の続きを知りたい人は原作お勧めです。
"長いものには巻かれろ"とか"清濁併せ呑む"なんて言いますが、現実的に長いものに巻かれたら、利用されるだけだし、濁に交わって清を保つなんてできない。朱に交われば赤くなり、悪魔に魂を売ったら地獄行き。どんなに辛い状況に置かれようと、「世界の半分をおまえにやる」と言われても、首を縦に振らず、自分が正しいと信じる道を進むことが重要。
戦後すべてが灰燼に帰した資源のない日本は、勤勉であることで世界に比肩する国になった。国岡鐵造の決断、実行力は、全ては日本の為という行動原理に基づく。創業から戦中戦後にかけて主導権を握ろうとする官僚と戦い、外油メジャーと戦った。タンカーを作り製油所を作り日本という国の土台を支え続けた。清濁併せ呑むことをせず正しいと思うことに邁進する姿は日本人として本来あるべき姿ですが、ここまで強い意志を持って経営していくのはやっぱり大変。出光佐三のような人はもうフィクションの中でしか生きられないのかもしれません。
上巻で、満州で「永遠の0」の宮部久蔵と国岡鐵造が逢うシーンがほんの1,2行出てくる。同じ想いをもった2人ですが、片や特攻で命を落とし、片や戦後復興の立役者となった。歴史にもしもはないけれど、あの戦争で命を落とした多くの優秀な若者がいたら、日本の戦後は大きく変わっていたかもしれません。
- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/07/15
- メディア: 文庫
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