百田尚樹著・講談社文庫
本が余りに面白くて、電車乗り越ししたのは久しぶり。それくらい面白くて引き込まれる物語です。
石油会社出光興産の創業者出光佐三をモデルにした経済小説。
ワークライフバランスが叫ばれて、仕事と個人の生活が切り分けされる今、この物語で描かれる会社は、社長の号令一下どんな仕事もこなすという対極です。社長は家族主義を貫き、戦後の混乱期や会社が傾きそうな局面であってもひとりの解雇もしない。「親が子どもを捨てられるか」捨てる親もいたでしょうし、今も子供を捨てる親がいる。"家長"としての親の在り方を会社でも実践していた国岡鐡造の心意気に感じた社員たちは社業にまい進する。
真に魅力的な経営者のもと働けるというのはステキな事だと思う。そういう経営者とはなかなか出会えない。形だけ真似をした経営者がいかに多い事か。仕事に命を懸けることができるというのは、外から見ればブラックとよばれても本人は満足しているのであればそれはブラックじゃない。ブラックかブラックじゃないかは主観の問題で外野から指摘されることではない。会社や仕事が嫌なら辞めればよいだけ。
国岡鐡造は日本の行く末を常に考えて行動している。そこにブレは全くない。会社の利益よりも国益を優先する。敵対するのは、私腹を肥やそうと利権にしがみつく同業者や癒着した官僚、会社の担当者、彼らを巧みに誘惑する石油メジャー。敵とは徹底的に正論を押し通し戦う国岡鐡造の姿を支援する人もいる。
明治生まれの気骨のある経営者の気概は、団塊の世代の経営者層に引き継がれず、更にその下の現在の世代は、表層だけ真似た経営者だけになった。だから、きつい仕事はブラックと呼ばれ、ワークライフバランスを雇用が叫び経営者側も承認するようになる。仕事は給料をもらう為、給料は生活をする為という割り切りが現代の仕事に対する考え方になった。国外との戦いに次々と負けている現状を国岡鐵造がみたらどう思うだろう。。

- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/07/15
- メディア: 文庫
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