日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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ハリウッドよ、これが本当の映画です。

今週のお題「人に薦めたい映画」


 さて、難しいはてなのお題です。映画って、万人が見て面白いっていうのはなかなか少ない。自分の一番好きな映画だからといって不用意に薦めても「うーん、いまいち」ってのはよくある話。
年齢や性別、時代も超えて見た人の99%が「良かった」っていってもらえるような映画はそうそうない。白黒は苦手って人には、古い映画は勧められないし、邦画というだけで駄目な人もいる。
 そんな中で、あえてお勧めするとするならば、日本人なら見ておかないといけない映画、黒澤明監督「七人の侍」(1954年東宝)です。
 昭和29年、白黒207分(3時間27分)の超大作。途中で5分のインターミッションが入ります。DVDですと2巻組。アメコミヒーロー寄せ集め、コンピュータでちまちま作られた映画ごときに「日本よ、これが映画だ」などと言われたくない。「七人の侍」こそまさに「これが映画」。ハリウッドが嫌いなわけじゃないですが、まるで日本の映画を莫迦にしたようなコピーを真に受けた若い世代は、こんなコピーを観ると自国の映画を卑下するばかりになってしまいます。確かに、最近の映画は小品が多くて、ハリウッドのような派手さはないし、あったとしてもハリウッドの真似事的な感じの作品が多い為ハリウッド作品=映画の面白さと勘違いしてしまう向きも多いと思います。でも、この映画を観ると、50年以上前の、あの圧倒的な敗北を喫した戦争から9年しかたっていない島国で作られたこの作品に今だ追いついていないハリウッドの底の浅さを感じてしまいます。


 黒澤明は、「観客に腹一杯食わせてやろうと。ステーキの上にウナギの蒲焼きを載せ、カレーをぶち込んだような、もう勘弁、腹いっぱいという映画を作ろうと思った」と語っています。喩えとしてはいかがなもんかと思いますが、時代背景を考えると、とにかく豪勢でみんなの食べたいものをてんこ盛りにした、まさにそんな映画です。西部劇に翻案した「荒野の七人」はじめ "7人もの"と呼ばれるフォーマットを確立したのもこの映画。

 ストーリーは、7人の仕官していない武士が、毎年野武士(山賊みたいなもん)に襲われる村を守る為に戦う話。百姓を守るだけなので名誉も恩賞もない。でも7人は命を賭して村を守る。7人ものキャラクターでも無駄な人は一人もおらず、しかもキャラクターがしっかり立っている。笑いあり、涙あり、活劇あり、男同士の友情、恋愛劇すらある。こんなに盛りだくさんで、しかも3時間もの長い映画なのに、物語は破綻するどころか、クライマックスに向かい怒涛のように進んでいく。張った伏線もしっかりと回収される。そしてラストは、言い知れぬ虚無感。こんな映画は他にありません。
 制作当時、当初の撮影予定を大幅に超過し、予算も使い果たしてしまう。東宝の経営陣は、いつまでたっても完成しない黒澤に「取り終わった分だけで公開する」という。それで黒澤は、取り終わった部分を繋ぎ試写をする事に。物語はついに野武士が村を襲うシーンに差し掛かる。茅葺屋根に上った三船敏郎が叫ぶ「来やがった!来やがった!」そこでフィルムはぷつりと切れる。「この続きは?」と問う経営陣に「1カットも撮っていません」と嘯く黒澤監督。経営陣は追加の予算を認め、ついに制作期間1年(通常この頃の映画は数カ月)総製作費2億1000万円(現在の30億円に相当)で完成しました。


 長いだ、白黒だと食わず嫌いな方にこそ、そしてハリウッド映画、洋画サイコーと言っている人にこそ観て欲しい作品。私は黒澤映画は比較的好きですけど、信者じゃないんで全部無条件で大好きってことはありません。日本にだってすごい映画がある。そういう事を知ってほしいだけ。難点をいえば時代的に音声が聞き取りにくい事なので、この映画は日本語字幕で見ることをお勧めします。
 前述のシーンまで観て先が気にならず観るのをやめられる人がいたらあってみたいです・・・。


他にもお勧めしたい映画はたくさんありますが、強いて1本を選ぶなら「七人の侍」しかありませぬ。

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