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『夕暴雨』 を読む。

 ハルキ文庫 今野 敏著

 
 2010年にハードカバーで出た時に購入既読ですが、他の安積班シリーズが、春樹文庫で揃えているので、改めて購入。こういうことをしているから、本が増えるんだよね…。
 TVドラマ「ハンチョウ」の原作シリーズですが、TVの方はなぜか観てません。週1回の連続ドラマって、ちゃんと見るのって結構大変。それに最近は放映後すぐにレンタルされてしまうので、無理して観なくてもいいかなとか思ってしまって。

 さて、「夕暴雨」ですが、ハンチョウシリーズに「機動警察パトレイバー」の世界がコラボレーションした異色作。事件もコミケの会場での爆破事件と、オタク心をくすぐる作品。新庁舎に移転したばかりの臨海署。安積班の刑事課強行係も2班体制になり、2班の班長はかなりの野心家で逐一安積班長に対抗意識を燃やす。
 安積と同期の交通機動隊の速水、その同期がパトレイバーの警備部特車2課第2小隊隊長"カミソリ後藤"こと後藤喜一という設定。臨海署管内のお台場の外れに、警備部が「倉庫のようなでっかい建物でなにかこそこそやっている」という話が冒頭に出てくる。どうやらそこで扱うのは建設車両を警備用に改造、転用したものらしいとも。随所に特車2課の動きが"噂話"レベルで語られる。そこに爆破事件が起き、爆破によって暴徒化しそうになる一般人を"何か巨大なもの"が現れ、その驚きで鎮静化する。そんな中、第2の爆発予告がネットに現れ、その対象が、メーカーに戻された特車2課で運用する車両を狙ったものと推測する安積班。さて犯人は?その目的は?と言った感じ。

 決してパトレイバーや登場人物が物語に直接現れる事はないのだけれど、物語には充分コミットしていて、パトレイバーを知っている人にとってはとても面白い作品です。一方で、そもそもの”安積班シリーズ”しか知らない人にとってはどう映るのか興味があります。

 勿論作者の力量でもあるのですが、こういう普通の警察小説とコラボしても違和感がないのは、パトレイバーが単純な荒唐無稽なロボットものではないことの証です。
 

 70〜80年代、刑事ドラマの脚本を書いていたり、監督(演出)をしていた人が、子ども向けの特撮TVドラマを創っていた時代がありました。ジャリ番、おもちゃを売る為の広告ドラマと揶揄されながらも、信念をもって物語を創っていた結果、名作と呼ばれる作品も確かにあります。

 創作された物語の重要なポイントのひとつが作家性であるとするなら、その対象は余り関係がない。そういった作り手側の矜持があるから、こういうコラボレーションをしても違和感がないのでしょう。

 パトレイバーを御存知の方は是非。安積班シリーズ好きの方は、これをきっかけにパトレイバーを観てほしいですね。

 

夕暴雨―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫 こ 3-35)

夕暴雨―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫 こ 3-35)