総ページ542頁の大作ルポルタージュ。9.11テロ(2001年)から始まり、2章からは1945年の沖縄戦、3章は米占領時代、4章は日本復帰、5.6章で復帰後の沖縄の苦悩が、ひめゆりの生き残りの語り部を中心に描かれて行きます。
青い海、青い空、白い砂浜。まさに地上の楽園。その楽園にアメリカ軍が上陸、戦場となり、沖縄県民の"根こそぎ動員"や避難できなかった住民に多くの被害が出た。太平洋戦争で住民が銭湯に否応なく巻きこまれた悲劇の戦闘。
こう書いていてもその実情は伝え切れない。圧倒的な兵力差。徹底した皇国民化教育で「生きて虜囚の辱めを受けず」との戦陣訓を民間人までが守り、集団自決する人々。死に切れず我が子や親兄弟に刃物を当て絶命させる。この世の地獄の全てがそこにはありました。
そして戦後は、米占領地となり、今も残る多くの米軍基地が建設されます。そして現在に至るまでその苦悩は70年も続いています。
しかしどうすればよいのか。沖縄の近くには野心たっぷりの近隣諸国、なんだか分からないけど敵がい心むき出しの国と、着々と核ミサイルを開発する敵と呼んでもおかしくない国があって、そういう国が米軍を全面移転して非武装中立の島などした日には一気に攻め入ってくるかもしれません。確かに微妙なパワーバランスがそこにはあって、簡単に県外移転を進める事は即侵略行為に利する事になりかねません。
「戦争をしてはいけない」それは誰も思っていることで、人が人を殺し合うなんて誰もしたいとは思っていない(と信じたい)。でも非武装無抵抗なら侵略などされないと思っているのは、戦後アメリカの占領政策で完全に牙を抜かれた日本人だけ。世界中の国は自分の国を守る為ならば、命を賭して戦う国ばかり。永世中立国で有名なスイスだって徴兵制があって、予備役30万人という軍事国家。話せば判るというのは残念ながら幻想でしかないのは、今の日本を取り巻く状況を観ても判るはず。協力すると言っておきながら土壇場で手のひら返されたり、勝手に自分の領土といって占領をつづけられている島々。いつまでたっても解決しない拉致問題。東シナ海での傍若無人な油田開発。
確かに沖縄戦では民間人が多数巻きこまれ亡くなっていったけど、相手方に与えたた被害も甚大、逆にそのことが広島、長崎への原爆投下に繋がったという見方もあるけど、沖縄の抵抗があったから、今の日本があるといっても過言ではない。
「戦争をしてはいけない」でも国を守ることの大切さ、国を思う気持ちは決して失ってはいけないと思うのです。
戦争の悲惨さを知りつつ、それでもなお守るべきものの為に戦う気概はやはり必要なことだと。
こういう考えも、好戦的と言われるんだろうか…。
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