日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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今週のお題「人生に影響を与えた1冊」


 本は、以前に比べればずいぶん読むスピードが遅くなったけど、それでも年間50冊くらい(月4,5冊))はいまだに読みます。
 本を意識して読み始めたのは、小学5年くらい。図書館(図書室)で借りて読むよりも文庫本買って読む方が好きでした。今から考えると学校の図書室にも面白い本いっぱいあったけど、本にはまるきっかけとなった日本SFものってほとんどなかったんですよね。

 そんな中、「自分の人生に影響を与えた一冊」と問われて振り返ってみると、なかなか難しいのですが、敢えて1冊というなら、
 宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ
を挙げたいです。
 
 童話なので、小さい頃読んだと思うのですが記憶になく、中学生になって新潮文庫宮沢賢治作品集「銀河鉄道の夜」を買ったら入っていて、もともと目的は表題作の「銀河鉄道の夜」を読みたかったんだけど、「セロ弾きのゴーシュ」「よだかの星」を読んで涙したのを覚えています。
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
 「セロ弾きのゴーシュ」は、町の映画館の楽団の中でセロ(チェロ)を弾く青年の話。
 まじめなだけが取り柄なんだけど、セロがあまり上手じゃなくなかなかみんなに合わせられなくて楽団長の指揮者にいつも怒られている。
 夜、一人で練習をしていると、猫やかっこうや子狸やねずみの親子が家にやってきて、知らず知らずにゴーシュの腕が上達する。それまでは疎ましいと思っていた動物たちを、発表会で見事に演奏をした後振り返り、感謝をするって話。


 中学生の頃、どうしようもない孤独感を感じていて、とはいえ今の状況から出奔してしまうだけの経済力も度胸もない。好きな事が何なのかもよくわからず、流されるように過ごす毎日がすごく嫌で。それでも夜が来て朝が来ればまた同じ日常が始まって、閉塞感半端なかった。
 ゴーシュもかなり行き詰っていて、それでも楽団のみんなに迷惑をかけないよう、一人練習をする中、動物たちがやってきて話し相手になりながら練習を進める。
 動物がしゃべる時点で童話でありフィクションであることは明確なんだけど、もしかしたら賢治も同様の体験があったんじゃなかろうか。チェロがあまりうまくなかった賢治が、夜中練習していた時に動物がやってきて、彼らを話し相手に練習を進めていたんじゃないか。
 だいたいその頃の私は(否、今もそうだけど)夜自分の部屋で一人参考書とか開いていていても、注意力散漫でなかなか集中することができなかった。動物たちの力を借りながらでもチェロの練習に集中できるっていうのはうらやましかったし、とにかく物事に対してどんな方法でもよいから集中して事に当たることの大切さを知ったのがこの作品のように思います。


 楽団の発表会で、突然チェロのソロを演奏する事になったゴーシュ。動物たちを追い払うために弾いていた、唯一まともに弾ける「印度の虎狩」を魂をぶつけるように多くの聴衆の前で弾きます。
 すると招集から万雷の拍手、楽団長や団員のみんなからもすごく褒められます。
 
 家に帰りゴーシュはかっこうの飛んで行ったと思った遠くのそらをながめながら、こんな風にいうのです。

「ああかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ。」と。

 自分の近くには必ず自分を助けてくれる人がいる。その人たちへの感謝を忘れてはいけないと、そんなことを考えましたね。


 「セロ弾きのゴーシュ」は青空文庫で読めます↓。
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html

 

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)