絲山秋子著・新潮文庫
"エスケイプ"は逃げる、"アブセント"は欠席、不在という意味。
40歳で左翼活動から足を洗った主人公正臣。66年生まれというから私の1歳下。この歳で革命だの左翼だのというのは、殆ど廃れていたけど、やってる人はいたかもしれない。法政とか明治とかはアジ看がいまだにあったっけ…。
いまでも細々と活動している人はいるんでしょうけど、70年安保、あさま山荘事件をピークに左翼運動に足を突っ込むなんて言いうのはよほどの物好き。結果的に主人公は左翼活動から足を洗って、仙台に住む妹が開く託児所で働くことに。その前に双子の弟、和臣がいた京都に向かう。
京都でふらふらしていると、奇妙な神父に出逢い、長屋の教会に居候することになる。この神父、実は偽神父で、法衣もコスプレだというが、日曜日には礼拝も行う。「形から入ったけど、今は神を信じてる」そういう偽神父の周りには、近所のおばさんたちが熱心に礼拝に通ってくる。
いろいろな事から逃げても、人は知らず知らずに絆を求めている。人って一人ではやっぱり生きていけない。いろんな人のやさしさが、どうしても必要なんですよね。

- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: Kindle版
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