小川榮太郎著・ 幻冬舎新書
百田尚樹さんは、歯に衣着せぬ発言ですっかりキワモノ作家の扱いですが、「永遠の0」とこれを原作とした山崎貴監督作品「永遠の0」はやっぱり名作だと思います。
特攻と聞くと、“戦争末期のやけっぱちの作戦に巻き込まれた優秀な学徒たちの悲劇”という風に紋切り調に語られることが常。「永遠の0」は、孫が特攻で散った祖父の足取りを追うことで、祖父の思いを追体験するという構成も斬新でなおかつ、妻子の為に生き残ると明言していた臆病者といわれたパイロットがなぜ特攻していったのかという謎解きもまた感動でした。
著者の小川さんは、手放しで「永遠の0」を絶賛しており、私も感覚的には近いものがありますが、2章3章で、同じ時期に公開された「風立ちぬ」とハリウッドで制作された日本の戦後を描いた「終戦のエンペラー」を挙げて、「永遠の0」と対比するかのように批判している構成はいただけません。同時代を描いた作品というだけで、それぞれテーマは異なります。またノンフィクションでない以上、事実の改変は仕方のないこと。それを”事実と異なる”といってしまうとフィクションは作れません。世の中には「実録」といっても明らかに事実と異なる映画なんてたくさんあります。
あとがきで「「特攻賛美」というレッテルを貼らないでほしい。」と書かれていますが、最終章で特攻していった若者のの遺書を引用し、巻末では、特攻計画を承認し終戦の翌日割腹自殺をした海軍の大西瀧治郎中将の遺書を掲載したたえているのはちょっと冷静さを欠いています。特攻作戦があったから、戦後アメリカの奴隷にならずに済んだ、その他の国のように蹂躙されなかったといっているのも、うーん、それは一面ではそうかもしれないけど、特攻作戦をそこまで持ち上げるのは危険な気がします。
調べてみると小川さんちょっと過激な思考の方で、そういった団体の長をしているとのことで合点がいきました。
ヒットした作品評を装い、手に取りやすい新書で考えを広めるというのはいい作戦ですが、何も考えない読者は感化されかねません。本を読む時は、自分の立脚点を確かにし安易に流されないようにしないといけないと思います。
と批判的な事を書きましたが、「永遠の0」に対しての感想は素晴らしいと思いますし、特攻についても改めて整理することができました。
- 作者: 小川榮太郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/12/12
- メディア: 新書
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