北森鴻・文春文庫
全身骨折された惨殺死体が発見され、その事件を追う2人の刑事、原口と又吉。調べてみると友人もなく、周辺住民との交流もなく殺害に至る一切の交友関係もない。捜査が行き詰った中で、被害者の自宅で1冊の大学ノートを見つける。捜査会議でその存在を報告せずに、2人の刑事がその謎解きをしていくと徐々に事件の全容が明らかになっていく。
数か月に1度、月刊小説誌に飛び飛びに短編形式で発表されていましたが、途中に"風景"と題した掌編を挟み込むことで、事件の全容が見える連作短編の形式になっています。
原口刑事の行きつけのビアバーが三軒茶屋にあった香菜里屋というクロスオーバーもあって、北森ファンはニヤケてしまう仕掛けもあり。
正義の仮面をかぶった悪人、悪人を気取った正義の人。無関係を装いながら、実は関係者。そんなことはいくらでもある。無関係を装い過ぎで、冷静に語っている事が、関係者であることを如実に物語ってしまう。自分の仮面は剥がれない、という過信は、洞察力の鋭い人には簡単バレてしまう。
人はみんな仮面をかぶっている。
あるコミュニティで見せている顔と、他のコミュニティで見せている顔が必ずしも同じとは限らない。私だって、会社の顔と他の顔とでは100%同じというわけじゃない。ある場で表現する必要のない顔はあえて出すこともない。人間なんてそんなもの。といいつつ、そこまで器用じゃないから、なんとなくボーダレスになっているのも事実。
仮面なんてかぶらない方が楽。好かれるとか嫌われるとかを意識しないで、素のままの自分で居られるのは理想です。見せられない面はあるけど、基本的にはかなり素のままで行っちゃってます。でもまぁいいか。もう老い先短いしw
- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/10/11
- メディア: 文庫
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