「狼の紋章」の続編。漫画版「ウルフガイ」の後半部分なので、「狼の紋章」と一体と考える方が良いと思います。
犬神明は死んでいなかった。その事実を知らないまま青鹿明子は狼と暮らす為渡米する。奥多摩の精神病院に秘密裏に移送された犬神明は、狂人医師大和田に不死解明の為生体実験を名目に猛毒投与され、今まさに四肢切断されそうになる。犬神明の身体を巡って、CIA、中国情報部"虎部隊"が暗躍し始める。CIAのエージェント西城恵、虎部隊の虎4(フースー)が登場、犬神明の敵役ながらその造形はすばらしく、今後、続編の「狼のレクイエム 第1部」「同・第2部」は、この2人が物語の中心に据えられていく。
「―紋章」は、一応学園ものなので今の年齢で読むと犬神明よりも神明に感情移入してしまう。犬神明の純粋さは汚れちまったオジサンには少々きつい。その点酸いも甘いも咬み分けて純粋な同胞を守ろうとする神明はかっこいい。
西城も極悪人ではあるのだけど、生きることに貪欲というか、素直というか、善悪二律では測れない魅力的な男。とはいえお近づきにはなりたくありませんが。
青鹿先生も、せっかく見つけた安住の地を犬神明とかかわったせいでとんでもない運命に巻き込まれ「―紋章」以上の苛烈な状況に。
ウルフガイシリーズは、「―怨歌」から始まったといっても過言ではありません。それくらい面白い。1972年ハヤカワSF文庫初刊ですので、実に41年前。「―紋章」に比べ時代性も薄く、今読んでも全く古びていないのがすごい。
この後の「狼のレクイエム」(第1部2部)は、SFマガジン編集長だった森優が退職した結果ハヤカワ文庫では出ず、また祥伝社NONNNOVEL(新書)で「―紋章」から出し直す。その後角川文庫に収録されますが、今回の改版を景気に「レクイエム」2部と、その後トクマノベルスで出たレクイエム第4部「黄金の少女」編全5巻、完結編のレクイエム第5部「犬神明」編全10巻を、雑誌連載時の生頼範義挿画でウルフガイ全集として出してほしい。できれば、アダルトウルフガイまで行っていただけると申し分なし。
とりあえず、文庫で読めないこの続きはkindle版で読みたいと思います。ここまで読んで止められるわけがありませんw