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「津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 」


津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)

筑波 昭著・新潮文庫

2001年に同じ新潮社から出ていたレーベル”新潮Oh!文庫”読んでいましたが、新潮文庫で再刊されていたので再読。内容は一緒。
津山事件と呼ばれる、昭和13年岡山県津山市加茂町行重に実際に起きた大量殺人事件。映画、TVドラマにもなった横溝正史の「八つ墓村」のモチーフになったことで全国的に有名になりました。1981年には西村望丑三つの村」として小説化され、83年に古尾谷雅人主演で映画化もされました。

八つ墓村」の頭に懐中電灯を鬼の角のように付けて日本刀を振り回す殺人者の姿が、映画の為に作られたものではなく、実際は学生服にゲートルを巻き頭の両側に懐中電灯と胸にライトを身に付け日本刀と猟銃を持つ姿で村人を殺しまわったというこの話に初めて触れた時、驚きを禁じ得ませんでした。
 「八つ墓村」はモチーフ程度の別のお話しでしたが、「丑三つの村」は津山事件をほぼ踏襲したセミノンフィクション的な内容、映画は成人映画(R18)でしたが、18歳にちょうどなっていたので観に行きました。そこには「八つ墓村」の多治見要蔵よりも実際の都井睦雄と同じ、史実に基づいた格好をした古尾谷雅人演ずる犬丸継夫(都井睦雄)がいました。

 村の秀才だった都井睦雄は、将来を嘱望されていたものの溺愛する祖母の反対で上の学校に進めず、更に肺を病んで徴兵検査も丙種合格(不合格)になってしまう。村には”夜這い”の風習があり、それまで受け入れてくれた女(既婚未婚問わず)たちから手のひらを返したように疎まれるようになったこと、当時不治の病といわれた結核で将来への希望が無くなったことで、睦雄は凶行に走る。集落23戸中12戸に押し入り、深夜1時から3時のわずか2時間のうちに30人以上を持っていた日本刀、猟銃で惨殺するという世界でも類を見ない大量殺人となった。

 ほとばしる凶行の後、村を見渡せる山中で都井睦雄は持っていた猟銃で自害する。年齢22歳。


 18歳の時に観た映画「丑三つの村」がとにかくトラウマで、勿論睦雄のやったことはとんでもないことではあるのだけど、睦雄がここまで追い込まれたのは睦雄だけの問題ではないのではないかという思いがずっとあります。
 時代背景も日中戦争から太平洋戦争前夜で、軍人になることが男子国民の本懐、因習の残る狭い村社会で、もともと秀才で村の誇りだった睦雄が病気を理由に急転直下疎外される側に回ったことで、その落差と治らない結核で将来を悲観したというのは、同情の余地がないとはどうしても言い切れません。
 睦雄は3通の遺書を残していますが、理路整然として気がふれた上での犯行ではなく冷静に判断し計画をされたものだということがわかります。一方で生き残った人の証言は、夜這いの習慣や睦雄との関係について、みんなが口を揃えて閉ざしており、睦雄の遺書にある動機の方が正しいように感じます。


 人は追い込まれると鬼になれる。私もそうなんだろうか。
 どちらかというと私は「殺してやる」派ではなく「死んでやる」派です。
 睦雄のように殺しまわるのは実は簡単で、相手を徹底的に痛めつけるのであれば、殺してしまう事よりも、自分が死んで孫子の代まで悪霊となって恨むとなる方が徹底的な復讐になると思うんですよね。
 と考えると、私の方が睦雄よりもよっぽど質が悪いかもw

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)