大倉崇裕著・虚淵玄監修/ 角川文庫
映画3部作後半のノベライズ。映画は第1部(怪獣惑星)しか観ておらず、その後の物語が気にはなっていたのでまぁよかったかな。
最初のゴジラ出現の後、突如現れゴジラ殲滅に力を貸してくれた異星人「エクシフ」と「ビルサルド」も、それぞれの思惑のもとに人類と行動を共にしていたことが分かる。結局異星人とは相容れないというのは、いかにも日本人の作った物語って感じです。2万年前に失敗したメカゴジラプロジェクトとエクシフの神・ギドラとの戦いでゴジラ殲滅できるか…。
1954年の誕生以来、これまで沢山のゴジラ映画が作られました。自然災害のメタファとしての存在だったり、人類の味方として敵怪獣と戦う存在だったり、1作毎にそれぞれキャラクター性を与えられていました。
今回のゴジラは2万年の時を超えて、まさに地球の一部となった巨大なゴジラ(=ゴジラ・アース)として描かれます。
ゴジラ映画はすべて観ていますが、悪いゴジラであっても、完全な死を求めていない事に改めて気が付きました。私たちの世界、特に映画では新しいランドマークが立つ度に破壊するのがお約束(東京スカイツリーは諸々の問題があって壊せないらしい…)のゴジラ映画。第1作「ゴジラ」で、東京湾で芹沢博士が自分の命と引き換えにオキシジェン・デストロイヤーを発動、骨になった後、山根博士が「あのゴジラが最後に1匹とは思えない」という言葉にあれだけ東京を蹂躙した悪魔のようなゴジラが「かわいそう」と思ったりする。悪の怪獣"ゴジラ"に対して、それが滅んだ後に爽快感を感じるどころかかわいそうと思ってしまう。これが日本人の国民性なのかもしれません。せっかく、当時の技術の粋を集めた建物を壊していく"悪い"ゴジラのはずなのに。
今回のアニゴジ3部作は、怪獣vs怪獣のカタルシスはありません。そういう意味では庵野監督の「シンゴジラ」と同様です。
特撮が本流のゴジラを、特撮では描けないでも特撮テイストを残した形での作劇を望んでいた人が多いと思います。私もその一人。SF用語と理解しにくい世界観。確かにこれまでのゴジラ映画とは異なりますので、作り手の思惑通り旧来のゴジラファンからは違和感満載で不評だったようです。しかし想定外なのは、新しいファンが付くほど敷居が低くなかったので、ゴジラシリーズの中でも最悪の興行収入になってしまいました。
・第1部)GODZILLA怪獣惑星…3.4億
・第2部)GODZILLA決戦機動増殖都市…1.0億
・第3部)GODZILLA星を喰う者…最終結果はまだ出ていないけど2作目同等との事
※「シンゴジラ」…82.5億
興行収入面では明らかに失敗でしょう。Netflix配信がメインだから映画の興行収入はどちらでもよいのかな…。
唯一よかった点でいえば、ゴジラの存在をより思想的に掘り下げた点かと。そういう意味では、映画でなくて小説版で十分。しかしながら、ノベライズ版も映画のシナリオをなぞっただけで、主人公や登場人物を掘り下げた内容になっていないというのは、映画版を見ていなくてもわかります。だから、映像化されていない前日譚の2作(『怪獣黙示録』/『プロジェクト・メカゴジラ』)の方がよっぽど面白かった。
今年公開されるハリウッド版ゴジラ「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」がちょっと楽しみですね。

- 作者: 大倉崇裕,虚淵玄(ニトロプラス)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/22
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