日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「危機の宰相」沢木耕太郎

文春文庫で文庫化されていたので購入。
おそらく沢木耕太郎、文庫化されているものはすべて読んでる、はず。学生時代からだから、もう20年以上、長い付き合いの作家さん。
沢木耕太郎のノンフィクションになぜ惹かれるのか自分でもよくわからない時がある。正直に言えば、彼の好んで書くスポーツ系の話題は、沢木耕太郎の本でなければ手に取ることもない。今回の『危機の宰相』も政治・経済の話で、私のもっとも不得意とするところ。
でも面白い。


もともとこの本は、1977年文藝春秋本誌に掲載されたもの。初の単行本化は2004年に完成、2006年に単行本として発行されたというもので、完成までに四半世紀を費やしている。
勿論、この間には、この『危機の宰相』と同時代の『テロルの決算』(演説会の最中に浅沼稲次郎社会党委員長を刺した少年の話)や沢木耕太郎の代表作『一瞬の夏』にかかわったり『深夜特急』の旅に出ていたりする。


この本に描かれている池田勇人首相の時代は、ちょうど自分の生まれる前年で終焉を迎えているので私は同時代を生きたわけではない。うっすらと記憶にあるのはその後の佐藤栄作田中角栄の時代から。
池田勇人の写真を見ると老獪な政治家臭がぷんぷんしていて正直あまり好きなタイプではなかった。
でもこの本を読んで彼もまた憂国の人だったのだと、どうすればこの国を良くすることができるかと真剣に考えた人だったのだと理解できた。
ひとが何かを成す時に、やはり一人では限界がある。彼はそれがわかっていた。多くの優秀な、文字通りブレーンの意見に傾聴し実践していく。
本当に優秀な人は周りの意見に耳を貸す。自分の持ってる知識をひけらかすだけじゃないんだよね。よいものはよいと素直に取り入れる柔軟さが必要なんだよね。
何千年も前にギリシャの哲学者ソクラテスがいったように、無知であることを知っている人のほうが自分は知恵者であるという人よりも優れているとも言うしね。


政治に興味がない、むしろ嫌いって人にもお勧め。★★★