弓道をはじめて、20年くらいになります。もっともここ10年は、殆ど弓引いていないので、実経験年数は浅いですけど。
いろんな武道がある中で、何故弓道を選んだのかというと、弓道の場合相手がいないから、と答えています。厳密にいえば、団体戦とか個人戦とか、戦う相手はいるのですが、的の前に立った時にその的を射抜くか外すかで勝負は決まるので、自分が相対しているのは、人ではなく的でしかありません。
柔道にせよ剣道にせよ、弓道以外の武道には必ず相手がいます。昇段審査の時も一緒に審査を受ける人同士が戦い勝敗によって審査されます。負けた人が昇段する事あるのか、経験ないので不明ですが、どうなんでしょう?経験者の人教えてください。
弓道は、自分の技量そのものが昇段の基準となります。相手のうまさなんて関係ありません。だって相手は的なんだもの。昇段審査の時は、5人一緒に的前に立ちますが、他の人が中ろうが外そうが昇段には一切関係ありません。自分の射がすべてです。
武器(武具)ではあるけれど、現在の弓道は、ひとを傷つけるものではありません。柔道、剣道、空手、合気道など、使い方によっては相手を傷つける技ですし、護身術という売り方をして生徒さんを集める道場もあるでしょう。
弓は護身には全く使えません。なにしろ遠いところを射抜く道具であっても、そう簡単に中中らない。上段者であっても、100発100中とはいかない。それが弓道。
こんな、武術として日常でなんの役にもたたないものなのに、何が良いのか。実利を求めるならば、他の武道をやった方が全然いい。
決められた動作(所作という)で、的前に立ち矢を射る。この動作のひとつひとつに意味があり、それを考えながら射たとしても当たるとは限らない。外れた時は反省し、中った時でさえ内心では(おし!)と思っても、「やったー」って表だって喜べない。このストイックさは、なかなかマゾヒスティックな心理をくすぐります(^^;)。
常に謙虚に。弓道の精神がここにあります。己をみつめ、己を磨く。相手と比べることで物事の善し悪しを判断しない。
こういう弓道の姿勢が好きなんです。
ま、ひとを殴ったりするのが嫌いで、それ以上に殴られたりするのが嫌いという、単に痛いのが駄目な臆病者だってこともあるんですけどね。