汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の皮裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところなく日は暮れる・・・・・
明治34年に発行された詩集「山羊の歌」にある詩です。中原中也を読むようになったのは、いつ頃だろう。20歳くらいかなぁ。最初は宮沢賢治が好きで、ずいぶん読んでいたけれど、他の詩人の詩も読みたくなって、手に取ったのが角川文庫・河上徹太郎篇の「中原中也詩集」だった。
30歳という若さで亡くなった中也の詩は、常に苦悩と哀しみの中にあって、でもそんな中に激しい想いが溢れています。夭折の作家ということでは、立原道造も好きですが、甘ったるい少女趣味で、今読むと気恥ずかしい感じ。
中原中也のこの詩もなかなか今の心情的に合ってるかなぁ。
「夏」
血を吐くやうな 倦ものうさ、たゆけさ
今日の日も畑に陽は照り、麦に陽は照り
睡るがやうな悲しさに、み空をとほく
血を吐くやうな倦うさ、たゆけさ
空は燃え、畑はつづき
雲浮び、眩しく光り
今日の日も陽は炎もゆる、地は睡る
血を吐くやうなせつなさに。
嵐のやうな心の歴史は
終焉をはつてしまつたもののやうに
そこから繰たぐれる一つの緒いとぐちもないもののやうに
燃ゆる日の彼方かなたに睡る。
私は残る、亡骸なきがらとして――
血を吐くやうなせつなさかなしさ。
今は、「青空文庫」でも読めるので、スマホの方は是非。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000026/files/894_28272.html