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「狼の肖像 平井和正論」


狼の肖像 平井和正論
 中島梓 著・kindle
 昨年1月、平井和正が亡くなりました。10代後半〜20代にかけてそれこそ貪るように読んでいました。1999年に自ら電子書籍に取り組みだす。今でこそスマートフォン電子書籍専用端末も安価で手に入れることができるようになりましたが、この当時はやはりまだ特別なものでした。
 電子書籍での作品発表に軸足を移して以降は平井作品を読むことがなくなりました。今、kindleで代表作の「幻魔大戦」シリーズ(「(無印-」は勿論、「新-」「真-」「―DEEP」まで)「ウルフガイシリーズ」他代表作はすべて読めます。まさに平井和正が思い描いていた時代がやってきたのです。

 「狼の肖像 平井和正論」は、70年代後半まだ角川での「幻魔大戦」連載直前に中島梓栗本薫)によって書かれた平井和正評論。SF小説誌「奇想天外」に連載された「狼の肖像」と、その前、新評別冊として刊行された「豊田有恒平井和正特集」に掲載された「ダイナミズムの系譜」、76年「早稲田文学」に発表された「情念の溶岩流―狼男の魅力」を1冊にまとめたもの。
 別冊新評は持っているので読んでいましたが、その他については初読。元々平井和正主催のe文庫で出ていましたが、kindleで出たことを知り購入。やっと全編を読無事ができました。

 今でも本を読む事が習慣になっているのは、間違いなく平井作品の影響が大きいです。80年代に幻魔大戦にハマり、ウルフガイや、角川文庫で発刊されていた旧作を次々と読みました。並行して本屋さんの同じ棚にある、小松左京をはじめ日本SFに手を出していました。


 平井和正からSFにハマりましたが、他の日本SFを読むと平井作品がいかに特異な作品かが分かります。とにかく暗い情念をもった初期作品。人類告発をこれでもかというほど続けた中期の作品。浄化されて人類の可能性を志向し始めたウルフガイ末期と幻魔の時代、2000年代に入って矢継ぎ早に発表された再始動の時代。風呂敷を広げ過ぎて完結しなかった作品も多いけど、これほどまでに作風が変わっていった作家も珍しく、その都度一部の読者は離れていきました。

 中島梓は、文壇デビューは中島梓名義での文芸評論ですが、小説家、栗本薫名義の方が知られているかもしれません。
 中島梓は09年に亡くなり、論じた側も論じられた対象も鬼籍に入っています。これまでは、作家が亡くなってしまうと、作品は追悼企画で吐き出された後は一部の純文学系の作家を除き、書店に並ぶことはありませんでした。書店の面積は限られているし、次々と新作を発表する作家さん、また、新しい作家さんが出てくる出版業界で、死後の作家に棚を割く余裕はないので、仕方がないことです。
 電子書籍は、そういった書店の事情は関係ありませんので、旧作をいつまでも販売できる。平井和正が思い描いていた時代になっているのは、感慨深いです。

 この本そのものは、平井ファンに向けたもので、中島梓自身が当時熱狂的な平井ファンなので、同好の士でないと読むのは厳しいです。特に描かれた70年代までの初期作品が、詳しい説明なく出てくるので押さえておかないと、ちんぷんかんぷん。私もこの頃の作品を最後に読んだのは2、30年前なので、すっかり忘れている作品もあり、再読をしようと思いました。

 

狼の肖像 平井和正論

狼の肖像 平井和正論


一番のお勧めは、「狼男だよ」ですね。印象深いNONNOVEL版がkindle化されています。↓