北森鴻 著・文春文庫
北森作品はあまり殺人事件のないものを読んでいたので、ミステリ作家と思っていなかったんですが、そういえばミステり作家さんでした。
八王子の先、山梨との県境い位置する遠誉野市に住む大学生、桂城真夜子は、彼氏の家にあった文芸同人誌に掲載されていた樹来たか子の詩に魅せられ、卒論のテーマにする。樹来たか子に関する文献は少なく、それでもたか子の履歴を調べることができた。彼女は子供を残し自殺をしていた。その遺児が、実は遠誉野に住んでいることを偶然に突き止める。
ここからいくつかの殺人事件が複層的に起きる。一見無関係のようなこれらの事件の中心には、樹来たか子の遺児、静弥がいる。真夜子と郷土史家の殿村、同人誌を持っていた真夜子の彼氏、遠誉野警察の刑事、洲内一馬が、絡まった紐をほどくように、樹来たか子の死の謎、そして連続殺人の謎に迫る。
本格的なミステリ小説を久々に読みました。でも、結果的に言えば、ミステリはやっぱ苦手だと自覚。基本ミステリを読んでいても、犯人はどうでもよく、犯罪に至る経緯も様々で動機はなんであろうと結果的に犯罪に手を染めることに是はない。
ただそこはやっぱり北森作品。単なる連続殺人事件ではなく、遠誉野という街の成り立ちをも殺人事件と絡めてきますので、最後はやはり唸らざるを得ない展開。
ミステリなのでネタバレは御法度。ただし、400頁頃からの真夜子のモノローグによる解決篇のあと、まだ40ページくらい残っていて、そこで更に問題の深堀がされますので、エンディングだからといって読み飛ばす事のないように。。
- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: Kindle版
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