それまで自主映画、CMディレクターとして知る人ぞ知る存在だった大林宜彦の商業映画第1作目。
DVDを持っていたのですがずいぶん久しぶりに観ました。
「HOUSE」名前だけは知っている人も多いはず。1977年だから小学校6年生で、ロードショウでは見ていません。ずいぶん経ってから名画座で観たのが初めてかな。その前にレンタルビデオで観たかも。
当時少年マガジンの巻頭グラビアで紹介されていて、観たいなと思っていたのですが、基本的にホラーはダメなので、敬遠したのかもしれません。
改めてみてみると、43年も前の作品なのにそんなに古さを感じませんでした。
私なりに、この映画の鑑賞法は以下の3点。
・他のVFX映画と比較しない。
特に最近の実写かCGかわからない精巧なVFXとは全く異なり、ほぼ全編マットペイントを多用したスタジオ撮影が基本。動きをコマ送りしたり、光学合成もわざとチープにしています。絵の中に人が配置されている「電気紙芝居」としてみるのが正しい。一方で女性はみんな可愛く撮る。池上季実子の継母となる予定の鰐淵晴子は常にそよ風をあてられてスカーフが翻っていて何とも神秘的。
・ホラーだけどホラーじゃない。
いろいろな意味で一般的なホラーとは異なる。舞台装置はホラーですが、基本は可愛い女の子を可愛く撮られたアイドル映画。同世代の男性は出てこず、唯一若い男性は尾崎紀世彦のみ。キーとなる羽臼屋敷の女主人南田洋子(羽臼華麗/はうすかれい、ですよw)は、出征した恋人を待ち続けるという、大林監督が常に持ち続けた戦争の悲しさを裏のテーマにしている。
・劇中劇を見る感じ。
あえてリアルでない演技をさせているのは大林監督の演出方法。それはあくまでも映画は絵空事であるという主張(冒頭に出てくるA MOVIE)にある。
特典のデジタルパンフレットで、「HOUSE」企画から公開までを監督自ら語っています。
そもそも東宝映像から「JAWS」みたいな映画を撮れないかという打診があり、いろいろと考えたものの動物や虫パニックものは面白くならない。煮詰まっていたところ娘の千茱萸さん(当時11歳)にどんなのが怖い?と聞いたところ、鏡に映った自分に襲われるの、とか、おばあちゃんちに行った時に井戸でスイカを冷やして引き上げたら生首だったら怖い、とか、ピアノに食べられちゃうの、と言われ、そのアイデアから「家が女の子を食べてしまう」という話に膨らませたそう。なので千茱萸さんが「原案」でクレジットされています。
企画は提出したものの、撮影開始のOKがなかなか出ない。脚本は面白いのだけど、これを撮りたいという監督が東宝にいないことが理由の一つ、さらにまだ当時は社員監督の時代で、いくら有名演出家であっても社外の人は撮影所で映画を撮ることはできない時代だった。
そこで大林監督は、まず企画を通すために知人友人に「HOUSE」の宣伝を勝手にやりだす。まずは企画書をもとにノベライズ化コミカライズ化される。その後小林亜星さんに話をするとゴダイゴに話を付けてくれてサウンドトラックが完成する。まだ映画撮影も決まっていないのに…。
さらにニッポン放送の当時敏腕ディレクターだった亀渕 昭信さんに話をするとオールナイトニッポン枠で4時間生ドラマをすることに。これが大当たりして高い聴取率を稼ぐ。
やっと東宝が重い腰を上げて撮影OKとなるものの、誰も監督をやりたがらない。東宝は大林監督自らメガホンをとってもらう為に社内調整をし無事撮影がスタートした。
企画書完成から撮影に入るまで約2年、今でいう「メディミックス」的手法を使い第1回監督作品を完成させたということ。
77年というと映画が完全に斜陽産業になっていた時代。異業種監督の先鞭をつけたのが大林監督だった。
改めて、「HOUSEハウス」は傑作だと思いました。
池上季実子(オシャレ)は本当にきれいで、大場久美子(ファンタ)は、まだあか抜けていなくてかわいい。公開当時は神保美喜(クンフー)のファンでした(^^;)。
(予告編)
House (Hausu) Trailer - Subtitled (Nobuhiko Obayashi, 1977)