実家に電車で帰ったので往復の車中で読み終えました。
坂野監督といえば、「ゴジラ対ヘドラ」の監督さん。「対ヘドラ」でゴジラは空を飛びます。封切の時に観ていますが、当時6歳の私でも「なんか違う」と思いました。もっとも同じチャンピオンまつりでみた「怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ」(怪獣大戦争短縮版)ではシェーをやってるし、翌年の「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」ではふきだしで怪獣が会話するとか、確かに特撮映画は好きでしたけど、いくら何でも…(^_^;)と思い、その後急速に怪獣映画への想いは冷えていくのでした。
その後、スターウォーズに始まるSF映画ブームでまたも日本の映画界は「惑星大戦争」だとか「宇宙からのメッセージ」とか白亜紀末のアンモナイトのように粗製乱造が続きます。和製SFの息の根を止めたのが小松左京自ら原作脚本監督をした「さよならジュピター」でした。
困ったSF映画ファンたちは、ちょっと待て、と。アメリカが「2001年宇宙の旅」、ソ連が「ソラリス」がある様に、日本にはそれよりも全然前に「ゴジラ」を作ってるじゃないかと。「ゴジラ」は日本が誇るべきSF作品じゃないかと気が付き、ゴジラルネッサンス運動が起きます。1983年にゴジラ他怪獣映画のニュープリント上映があり、1984年、9年ぶりに新作ゴジラが公開されました。正義の味方のゴジラではなく、第1作に戻って恐怖の怪獣としてよみがえったゴジラは、興収17億とそれなりに受け入れられたけど、有名俳優タレントの意味不明なカメオ出演や、なんか内輪受けの感がないわけでもなく、更に第1回東宝シンデレラガールの沢口靖子の演技が素人だったこともあり、100%満足ってわけでもなかったのを思い出します。
さてこの本、初監督作品の「対ヘドラ」の話だけでなく、その前の万博の三菱館映像制作の話や黒澤明、山本嘉次郎、成瀬巳喜男、古澤憲吾といった昭和の名監督の助監督時代の話、2014年のギャレス版「GODZILLA」でのエグゼクティブ・プロデューサーとしての制作裏話などが書かれており、興味深く読めました。若大将やクレージーキャッツ映画の古澤憲吾監督が東宝退社後消火器販売や駐車場の管理人とかで生計を立てていたという話はちょっとショックでした…。
これまで28作+海外制作2作と今回の「シン・ゴジラ」合計31作の中でも、やっぱり異色な「ゴジラ対ヘドラ」チープ感は否めませんが、意欲作であることは間違いありません。
本の最後に今後の企画について書かれています。御年85歳で創作の意欲衰えず。
- 作者: 坂野義光,(発行)フィールドワイ
- 出版社/メーカー: メディア・パル
- 発売日: 2016/07/30
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