「ふぞろいの林檎たち」は1983年から1997年にかけて第4部(I~IV)まで作られました。
Iは、主人公たちが大学4年生
Ⅱは、社会人1年目
Ⅲは、20代最後
Ⅳは、30代半ば
を舞台にしていました。
Vは様々な事情で映像化されなかった幻の作品で、40代の”林檎たち”が前後編で描かれます。既に”林檎たち”を演じた俳優さんは60代となり、連作のドラマですので主役級は別の役者さんでドラマ化することはできない。仲手川のお兄さんが、Iの小林薫からⅡで他の役者さんに変わったのですら違和感がありました。
年齢が近い事もあり、「ふぞろいの林檎たち」よく見ていました。エリートではない実物大の若者の姿、身につまされる台詞に毎週ドキッとしていました。
歳をとっていつまでたっても成長しない”林檎たち”にだんだん共感できなくなり、3,4シリーズはあまり熱心に観ていませんでした。この頃、自分は結婚し、子供がいて、”林檎たち”ほど過去を引きずっていなかったせいかもしれません。
ただ同級生(実際は少しお兄さんお姉さん達)のその後が気になるような感じでなんとなく観ていました。4シリーズは、”林檎たち”よりも、克彦(長瀬智也)と美保(中谷美紀)の物語が中心になってしまい残念でしたが、今回のシナリオ「V」では、ちゃんと”林檎たち”の物語になっており、これをドラマで観れたらよかったのになーと思いました。
「男たちの旅路」は、NHKで1976年2月から1982年にかけて3部+spの全13話が間をおいて制作されたドラマ。
鶴田浩二演じるガードマン(吉岡司令補)と若いガードマン(水谷豊、森田健作、桃井かおり、柴俊夫、清水健太郎、岸本加代子他)とのやり取りで、戦争を実際に体験した世代と戦後生まれ世代との価値観の違いを様々なテーマで描いています。
時に好きな回は、第4部3話「車輪の一歩」。この回については以前当blogでも詳細紹介しています。↓
hee.hatenablog.com
このシナリオ集に収められている「オートバイ」は、本来第4部2話に予定されていたもの。いつも吉岡司令補(鶴田浩二)と対立する陽平(水谷豊)が、NTVの「熱中時代」の主役に決まり、「男たちの旅路」に出演できなくなった為お蔵入りとなったシナリオ。これはこれで観てみたかった。
名作であればあるほど主演、助演に関わらず役者の変更はして欲しくありません。NHKでいえば「阿修羅のごとく」で巻子(八千草薫)の夫が、パート1では、緒形拳だったのに、パート2では露口茂になっていたのはやっぱり違和感がありました。
「ふぞろいの林檎たち」も「男たちの旅路」もオリジナル俳優さんではもうできない。しかし、こういった形で出版されると、好きだった俳優さんの姿と声で脳内再生できます。
この本には、未映像化の2時間サスペンスドラマシナリオ(「今は港にいる二人」)と山田太一が初めて書いたシナリオ(「殺人者を求む」)が合わせて収録されています。
ハードカバー税込2790円と高いですけど、「ふぞろいの林檎たち」「男たちの旅路」の新作が(脳内で)観れる、映画2本分と考えればありです。
「北の国から」も「2002遺言」以降も脚本の倉本聰の手により構想化されているとのこと。シナリオ化されているかは不明ですが、できればこちらもシナリオ集出版をしてほしいです。