本橋信宏著・宝島社SUGOI文庫
本橋信宏さんの本は気がつくと読むようにしています。この本も時間つぶしに寄った桜木町駅の本屋さんで偶然見つけて即購入。本橋さんをfacebookでフォローしていて、最近”東京の異界”シリーズの第2弾、円山町が出ているのは知っていたのでそれを探していたら、偶然鴬谷の文庫版が出ていました。
鴬谷。山手線の駅は最低1回は降りた事ありますが、そういえば鴬谷を使ったことは恐らく1回もないです。
エロスとタナトスの街
鴬谷駅のホームに立つと、2つの異界が眺望できる。
山の手戦の外側―池袋方面から山手線外回り、時計方向に進行し下車して左手に広がるのは、乱立するラブホテル群である。
対してホームの反対側は上野寛永寺の霊園が広がる。
鴬谷駅は陰と陽、生と死が併存している。ラブホテルでは、二十四時間男女が性交に励む。フロイトが唱えたエロス(生)の異界であり、対する霊園側はタナトス(死)の異界だ。
この冒頭部分で、鴬谷にぐっと引かれてしまいました。
行政区分上は「鴬谷」という地名はない。あくまでも駅名だけ、というのも面白い。古くからいる人にとって鴬谷という俗称は、根岸一丁目から五丁目あたりを指すそう。
とても風流な名前で、江戸の昔から文人粋人が愛した街。正岡子規の終の住処もここ鴬谷。
この本は、鴬谷を根城に"春をひさぐ"女たち、それを求める男たちの物語を追いかけたルポルタージュです。鴬谷駅付近のホテルを利用したデリヘル、近くにある吉原のソープ嬢。韓国人のデリヘルも流行っているそう。人妻、デブ専、熟女、超熟女(”ちょうじゅくじょ”を変換したら鳥獣駆除と出たw)ありとあらゆる男の性の欲望を吸収する、最終地。後10〜20年若ければすぐにでも鴬谷ツアーというところですが、今となってはそういう気も起きず。歳を取るってこういう事。
本は現在の鴬谷の姿のみならず、過去の鴬谷の姿も活写する。美味しそうな大衆居酒屋。高級な豆腐料理店。鴬谷の魅力が更に増します。
巻末、文庫化で追加された二代目林家三平、海老名香葉子親子のインタビューが載っています。昭和の爆笑王林家三平はここで生まれ育ち、この街を愛していた事が語られます。
単にエロスの街ではない、多面的に鴬谷を感じる事が出来る本でした。
やっぱ一回散歩してみたくなりました。
お勧め。
- 作者: 本橋信宏
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2015/02/05
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る