日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

思ったこと、思っていること。読んだ本、観た映画、TV。聴いた音楽…。会社でのこと、家族のこと、自分のこと。日々のうつろいを定着させています。はてなダイアリー開始は2003年、2006年4月から毎日更新継続中。2017年6月8日「はてなblog」アカウント取得、2019年1月「はてなダイアリー」から正式移行しました。アクセスカウンター2019年01月26日まではpv(2310365)です。

「凶悪」

凶悪 スペシャル・プライス [DVD]
 2013年・白石和彌監督

 新潮45編集部編のノンフィクション「凶悪―ある死刑囚の告発―」を映画化したもの。
 2000年前後に起きた殺人事件控訴中の殺人実行犯の後藤良治(映画では須藤純次・演:ピエール瀧)が小菅拘置所から新潮(映画では明潮45編集部)に立件されているものと別の1件の殺人、2件の死体遺棄事件について告白する。上告しているさなかの別に事件関与の告白は自らの首を絞める。そうまでして許せないのは、数々の事件の首謀者で、先生と呼ばれる男、三上静男(映画では木村孝雄 ・演:リリー・フランキー)を絶対に許さないという信念からだった。「上申書殺人事件」といわれ、当時話題となった事件ですが、最初に新潮45に掲載されたのが2005年とすでに10年も経過しており知っている人は少ない。本や映画として残しておくことに意義はあると思いますが、この話、脚色はあるにせよ、ほぼ事実をもとにしており、これが事実ということに恐ろしさと嫌悪感を抱かざるを得ません。そういう意味では、元気なときじゃないとみれない映画で、原作を読み、DVDは持っていたものの1年以上寝かせてしまいました。結果的には、やっぱし後味は決して良くない。園子温監督の「冷たい熱帯魚」と等質の作品ですが、こちらの方がより事実に近い為エグイ。


 人間の本性はどこにあるのだろう。殺人なんて自分には関係ないと思っている傍らで、毎日のように殺人事件が起きている。子が親を殺し、親が子を殺す。隣人を殺し、友人を殺す。そこには様々な理由があるとは思うけれど、他人の人生のピリオドを自分以外の人間が打つことは絶対に許されない。それを教唆されたとはいえ、平然とやってのける須藤はやっぱり許される存在ではない。しかし、自分の手を汚さず、殺人を錬金術バブル崩壊後の油田だと豪語する木村も同罪。
 しかし巧妙に証拠を隠滅する木村は、発覚した保険金殺人のみでの立件で、上申された2件の殺人については証拠不十分で審理できず、結局無期懲役。やっぱりここでも頭いい奴が生き残っていくということか…。殺人を指示しながら平然としている木村に比べ、直情的に自分を裏切った奴、嘘をついた奴を追い詰め殺してしまう須藤の方が、まだ人間的。


 映画では、この事件を追いかける記者、藤井(山田孝之)の家庭も大きな比重を占めている。この部分はフィクションですが、藤井の家には認知症を患っている実母がおり、専業主婦の妻が介護にあたっているけど、すでにそれも限界。ホームに入れることを提案する妻の意見に耳を貸さず、家庭崩壊寸前。介護疲れで虐待を告白する妻。何もわかっていない認知症の母。仕事に集中するあまり家庭を顧みない藤井。
 
 
 実話とフィクションを織り交ぜながら、自分にもないとは決して言い切れない醜い人間像をこれでもかと見せつけられるのは、確かに不快だけど、それでもやっぱりそういうものが自分にあるのではないかという疑問を自らに問いかける為にこういう作品はあるのだと思います。

 全然すっきりしないのでお勧め作品ではありません。興味のある人、好奇心旺盛な人には是非。

 

凶悪 スペシャル・プライス [DVD]

凶悪 スペシャル・プライス [DVD]