日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

思ったこと、思っていること。読んだ本、観た映画、TV。聴いた音楽…。会社でのこと、家族のこと、自分のこと。日々のうつろいを定着させています。はてなダイアリー開始は2003年、2006年4月から毎日更新継続中。2017年6月8日「はてなblog」アカウント取得、2019年1月「はてなダイアリー」から正式移行しました。アクセスカウンター2019年01月26日まではpv(2310365)です。

というわけで「幸福の黄色いハンカチ」

あの頃映画 幸福の黄色いハンカチ デジタルリマスター2010 [DVD]
 1977年松竹・山田洋次監督。
 結構何度も見ていますが、本編を全部観るのは恐らく10年以上振りかも。

 失恋してそれまで勤めていた工場を突然退職した欽也(武田鉄矢)は、退職金で赤いファミリアを買う。北海道旅行を計画した欽也、友達に同行を求めるも既に自分が失恋したことが知れ渡っていて、結局一人で、北海道へ行くことに。
 北海道についた途端、ガールハントを始める欽也。そこへ同じように失恋の傷心旅行に来た朱美(桃井かおり)と出逢う。
 一方、6年の景気を終えた島勇作(高倉健)は、街に出て久しぶりの食事。ビールを頼み、ビールが出された時にラーメンとかつ丼を注文。両手でいとおしむように飲むビールのうまそうな事といったらこれ以上美味しそうにビールを飲む映画はみたことがない。そしてラーメンを3口ですすりあげる。郵便局に向かい、葉書を買う勇作。郵便局員に葉書の値段を聞く。そうか、この人は刑務所にいたから葉書の値段知らないんだ。更に局員に「夕張まで速達にしたらいつ届くか」を聞く。夕張が目的地なのかと思うけど、その後欽也たちと合流してすぐ、目的地は決めていないという。。

 色々あって、最後は3人で勇作の妻(倍賞千恵子)の待つ夕張に向かう。奥さんは待っていてくれるか、黄色いハンカチははためいているか。

 
 今から見ると、武田鉄矢のうざいほど自己主張する演技が鼻につく。この後、金八先生でブレイクするわけですが、その武田鉄矢も今となっては人格者の仲間入りをし、いい俳優さんになりました(全然話は違いますが、水谷豊も若い頃は落ち着きのないポマードべっとりのチンピラ役が似合ってましたが、今やすっかり右京さんww)。
 逆に桃井かおり高倉健は、既に確立されているというか、この頃から印象が全く変わっていない。しかし、健さん、当時46歳。今の私より年下。。。


 108分という短い時間で、無駄が全くない。最後判っているのに、毎回ドキドキする。そういえば、はじめて観た時も年が近いはずの欽也よりも勇作に感情移入していました。
 出てくる画面は、多少古い感じもしますが、北海道という大自然が舞台なので、都会を舞台にしている当時の映画よりも古さを感じません。
 観たことのない人にはぜひお勧めな名作です。

 

「宇宙大戦争」


 1959年東宝本多猪四郎監督・円谷英二特技監督


 この連休、古い東宝特撮映画を観てます。
 「宇宙大戦争」、舞台は1965年ですから、制作年のわずか6年先。舞台でさえ今から50年前。人類初の月面着陸が1969年ですから、その10年前に月面での宇宙人との戦争を描いているというのは驚きです。

 
 この映画怪獣は出てきませんので、他の東宝特撮に比べればマイナーな作品ですが、制作年を考えるとこのセンスはなかなよい。確かに古さは否めませんが、これぞ東宝の描いた未来って感じ。それに比べて、昨日観た「惑星大戦争」の酷さといったら…。


 突然UFO空の攻撃を受ける宇宙ステーション。その後鉄橋やタンカーが浮かび上がるという事件が世界各地で頻発する。その対策会議に出席していた科学者が遊星ナタールの宇宙人に"インプラント"されて、妨害工作を始める。敵の前線基地が月に有ることを知った地球人は、2台の宇宙艇スキッフ号で敵基地殲滅に向かう、という話。

 光学合成のレーザービーム飛び交うUFOとの宇宙戦。科学者(池部良と安西郷子)のラブロマンスありと、たかが90分の中にてんこ盛りの内容だからダレずに観れます。
 安西郷子の綺麗な事といったら!この頃の東宝の女優さんは本当にキレイ。
 伊福部昭の音楽も場面を盛り上げます。1954年の「ゴジラ」で使われた「フリゲートマーチ」が編曲された「宇宙大戦争マーチ」の中、敵UFOとの闘いはいやが上にも血沸き肉躍る。



 ゴジラ映画も良いけど、こういう大人向けのSF特撮なかなか良いです。
 あ、勿論今の作品と比べちゃ駄目です。CGのない中よく作ったなぁっというノスタルジーも込めて、お勧めです。
 

 

 

「惑星大戦争」


 1977年12月東宝福田純監督/中野昭慶特技監督


 もしかしたら新しい発見があるかと思って、毎年1回は観てますw 結果、有りませんでしたwwやっぱり駄目ですwww
 1977年といえば、「スターウォーズ」が公開された年(日本公開は翌年)。だから公開でいえば、「惑星大戦争」の方が先ですが、東宝の人間が、「アメリカですごく面白いSF映画やってるらしい」という噂を聞きつけて、とりあえずハワイまで観に行き、「これからはSFが来る」と思ったのか、突貫工事で作っちゃった作品。

 田中友幸プロデューサーの「「海底軍艦轟天を宇宙に飛ばす」というアイデアは決して悪くない。しかしいかんせん期間が短過ぎる。B級アクションが得意な福田純を監督に据え、”火薬バカ”(褒め言葉です)の中野昭慶特技監督委据えた時点で方向性は決まったといってもよい。
 まだVFXのない時代、全部特撮でやるのはさすがに厳しい。日本の特撮はミニチュアワークと怪獣ではその威力を発揮しますが、宇宙ものだと更にチープさが目立ってしまいます。

 わざわざ松竹から森田健作を借りてきたりして、シリアスな演技をさせればさせるほど失笑を禁じ得ない。。いくら短いお話でも、登場人物の上滑りな演技は、演技者が悪いのではなく、ひとえに脚本と構成による。俳優は悪くない。でも浅野ゆう子は…。まぁビジュアル的にはいいいから許す。なんとステキな脚線美。

 この映画、発端となった「スターウォーズ」よりも、1977年8月に大ヒットした「宇宙戦艦ヤマト」をかなり意識して作られています。地下基地からの出発シーン、乗組員は紅一点。更に先端のドリル発射後の姿は、まんま波動砲口をもったヤマト(の劣化版)。もう笑うしかありません。

 しかし、しかしです。
 「宇宙戦艦ヤマト2199」で、惑星大戦争のオマージュというべきシーンが再構成されてました。轟天に侵入してきた敵が紅一点ジュン(浅野ゆう子)を誘拐拉致するという。「2199」でも森雪が侵入してきたガミラスの特殊部隊に誘拐されてました。
 「―ヤマト」をパクった「惑星大戦争」を更にパクり返す。クロスカウンター→ダブルクロスカウンター→トリプルクロスカウンターみたいな感じ??


 これを見た後、「スターウォーズ」をみたSFファンは日本特撮に見切りを付けた人も多いはず。その後、小松左京自ら監督した「さよならジュピター」で完全に息の根が止まった日本の宇宙もの映画は、キムタクヤマトが出るまで実に30年近く作られる事はなかった…。


 書いてますが、お勧めの映画じゃありません。観なくても一生後悔しません。ただいつも高級なケーキばかり食べてると、たまに駄菓子食べたくなったりするじゃないですか。そういう感じです。こってりハリウッドSFに飽きた人で、駄菓子は駄菓子と割り切って見れる人は是非観て欲しい怪作です。


「砂の器」


 1974年松竹・野村芳太郎監督 脚本 橋本忍山田洋次

先日何となくyoutubeを見ていたら昔のラジオ番組「月極ラジオ」というのを発見。MBSの深夜放送で2006年1月、作家、上方演芸研究家の戸田学さんの回で、映画をネタにフリートークをする番組で、そも第2回目が「砂の器」をテーマに話をしていたものがyoutubeに上がっていました。パーソナリティの戸田学さんの声帯模写が素晴らしく、まるで映画を見ているようなあらすじと解説で一気に引き込まれました。
 


 いままで何度も映画化TVドラマ化されている「砂の器」は、それぞれ微妙に設定が異なっており、また制作された年代、演じた俳優さんの好悪で、個人的な評価は分れると思いますが、映像化作品の中で傑作なのは、やはりこの74年松竹版ではないかと思います。今年、古い映画をデジタルリマスター―して全国を回って上映している映画会「第二回 新・午前十時の映画祭」(http://asa10.eiga.com/)でも初回上映が終了した7月25日までの16週間で1万588人と、これまでトップだったロバート・ワイズ監督『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)の7433人を大きく上回る動員記録を達成したらしい。上映スケジュールはこちら→(http://asa10.eiga.com/2014/cinema/422.html)。家の近くだと、海老名が来年3月だからここで観に行こうか…。ビデオ、DVDではもう何度も見ているのですが、スクリーンでは未見なんです。。


 というわけで、家に帰ってからDVDで何度かの再見をしました。今から40年も前の映画だから、古い印象は仕方ありません。しかしそれを超えて訴えかけるものがこの映画には有ります。
 親と子の愛情、仕事に取り組む姿勢、そして運命の残酷さ。勿論殺人は許されない事だけど、犯人に対して単純に利己的だと断罪するには重すぎる人生。
 映像的には、日本の原風景、四季折々の美しい姿と共同体になじまない者への容赦ない差別。そんな中でも正義を貫く人。美しさと醜さが混然と表現されています。


 観たことない人は是非見て欲しい邦画の大傑作です。

本浦親子の遍路行を中心にダイジェストした動画がありました↓

 




 

「妖星ゴラス」

妖星ゴラス [東宝DVDシネマファンクラブ]
1962年東宝本多猪四郎監督(特技監督円谷英二

 昨年から東宝シネマファンクラブと銘打ち期間限定で廉価DVDが発売されていて、そのキャンペーンで3作品買うと1本無料でもらえるというのがありました。何気に観たいDVDは既に買ってしまっているので、どれにしようか迷って選んだのが「妖星ゴラス」。ストーリーは知っていたしおそらく昔TVで観ていると思うのですが、まともに全編観たのはこれが初めてだったりして(^_^;)。


 地球に黒色矮星が迫ってくる事が判る。「ゴラス」と命名されたその惑星は、地球の8000倍の質量を持っているという。その惑星が地球に衝突することが確実になり、それを回避するには、ゴラスを爆破するか、地球を移動(!)させるかの2択しかない。地球全部の核兵器を集めてもゴラス破壊は出来ないということで、南極にロケット噴射基地を造り、地球の軌道を変えることになる。この能天気な荒唐無稽さ。しかも時代は1980年代とゆー。

 この噴射基地をゴラスが地球に近づく前に作るのが後半の見せ場。時間のない中突貫工事でつくっていると、巨大セイウチ(南極怪獣マグマ)が現われる。所詮セイウチ。隠れているところをレーザーでがけ崩れを起こし生き埋めに。
 やっと噴射基地が完成、地球が軌道を外れ無事後ラストの衝突は避けられたものの、陸地には高潮が襲い平地という平地は水浸し。ここら辺はまさに東日本大震災と見まごう大特撮。ミニチュアながら、都市が高潮に襲われるシーンはなかなか観応え有ります。
 この映画、本編以外の殆どをミニチュアで作っていて東宝特撮映画の中でもピカイチの出来ですね。ザ・昭和の志向した未来世界。実際に来なかった未来がここにありました。

 
 東宝特撮の美男美女も総出演。とはいえ困難に立ち向かう漢の物語なので美女は水野久美白川由美くらいです。だから男の方は東宝オールスターです。池辺良、久保明平田昭彦佐原健二、そして偉い人藤田進などなど。チョイ役で天本英世も出てます。


 この手の映画、今ならハリウッドが恥ずかしげもなく作りますが、アメリカ映画と根本的に違うのは、もし隕石衝突なんて話だったら、アメ公なら破壊しようとするところ、地球を逃がす方法に全精力を固める。まさに専守防衛w。さすが日本です。


 SFXに慣れた人にとってミニチュア特撮はちゃちでださく見えるかもしれませんが、これ全部手作りだって考えて観ると(邪道な観方かもしれないけど)なかなかすごいです。しかも50年以上前の作品。日本人ならある意味必見の作品でした。


「ご縁ですよ!」DVD発売〜。


 久しぶりにヴィレッジバンガードに寄ったら、脱力系スローライフアニメ「Peeping Life」の最新作が発売されてた。 去年「ごはんですよ」で有名な"桃屋"とのコラボレーション企画「ご縁ですよ!」がDVD化されてました。もうね、そっこーレジに持っていきましたw

 
 「ご縁ですよ!」は、サラリーマンの白飯(しろめし)くんが、擬人化された桃屋のベストセラー商品(食べるラ―油、やわらぎ穂先メンマ、江戸むらさきごはんですよ、味付搾菜、きざみにんにく、きざみしょうが)とデートをする話。もうね、個性的な桃屋ギャルズに翻弄される白飯くんが痛々しくて泣き笑いww
とりあえず第1話「ラー油ちゃんの場合」を見てみて↓

DVD買わなくても、全9話桃屋hpの特設ページで見れます。
http://www.momoya.co.jp/goendesuyo/

DVDは全9話の本編と本編の後日談「おまけですよ」全4話付き。さ・ら・に 本物の「ごはんですよ小瓶」が付いた限定仕様♪価格はなんとこのボリュームで1500円(税別)
 キャプションが笑います。「オカズになる(ハート)DVD」。ちょっとエッチな想像をしてしまいますが、ごはんですよが付いてるから「オカズになる」って、まんまやんww


公式ページでおまけですよも観たくなった人はヴィレバンに急げっ!
 【DVD本編映像】
1.ラー油ちゃんの場合編
2.やわらぎちゃんの場合編
3.ごはんですよ!さんの場合編
4.ザーサイちゃんの場合編
5.白飯くんの場合編
6.きざみにんにくちゃんの場合編
7.きざみしょうがさんの場合編
8.キムチの素子ちゃん場合編
9.リベンジ ラー油ちゃんの場合編

【映像特典】
●ラー油ちゃんとプラモ店員
●ザーサイちゃんとゴミ捨て男
●白飯くんの中学時代
●やわらぎちゃんのカラオケ後

「男たちの旅路第4部3話 車輪の一歩」


 1976年から82年まで、間をあけながら続いていたNHKのドラマ「男たちの旅路」の1本。脚本は山田太一
 第4部は1979年11月24日に初放映されています。第1部は1976年ですから小学5年生。第4部は中学2年生だったわけですが、当時観た衝撃は今でも忘れられません。


 「男たちの旅路」は、警備会社に勤務する鶴田浩二演じる吉岡が、森田健作や水谷豊や桃井かおり(1話では自殺をしようとするOL)、第2部からは柴俊夫、4部では清水健太郎、岸本加世子などの若いガードマンと接しながら、様々な問題に対して若者の考えと特攻隊員だった吉岡の古い世代の意見を戦わせつつ、物語が進行します。
 「車輪の一歩」は、身体障害者の問題を扱った一編。
 吉岡の所属する警備会社が担当しているビルの入口に、車いすに乗った若者(川島(斎藤洋介)、藤田(京本政樹)、浦野(古尾谷雅人)、吉沢(見城貴信)、日比野(水上功治)、阿川(村尾幸三))が集まっていて、通行人の邪魔をしている。ガードマンの尾島(岸本加世子)は、そこから退くように説得するが、その後、兄(清水健太郎)と一緒に住んでいるアパートに押し掛けられ、彼らに付きまとわれるようになる。彼らの意図は、身体障害者を邪魔もの扱いする2人へのいやがらせだった。

 尾島兄妹は、彼らの為に家を借りようと奔走するが、不動産屋から断られ続ける。車いすでは、ちょっとした段差も助けを必要とする。このドラマが作られた頃は、車いすの人が、映画館に入ったりバスや電車に乗るのさえ一人では難しい時代でした。常に誰かの助けを借りないといけない彼らは、卑屈になっていた。
 そんな時、同じ車いすに乗る少女(斉藤とも子)と文通(!)を通じて知り合った京本正樹は、電車に乗ったことがないという彼女を外に連れ出そうと彼女の家を訪ねる。
 車いすの友達の力も借り、近くの公園までみんなで行くことに。そして、踏切を渡ろうとした時、彼女の車いすの車輪が溝にハマってしまう。近づく電車。間一髪のところで近くの人に助けられる。。大の大人が6人もいても、車いすで足が不自由な彼らでは彼女一人を助けることができなかった。

 彼らの面倒を見続け、勤務後部屋さがし続ける清水健太郎は、その疲れから勤務中に居眠りをしてしまい、吉岡に指導される。事情を聞いた吉岡は、車いすの彼らと面談をし、彼らの話を聴く。それは、今まで知らない障害者の厳しい世界の話だった。


 ある日、吉岡の家に川島(斎藤洋介)がやってくる。先日の話し合いで吉岡が言おうとして言わなかった言葉が気になってきたということだった。そして吉岡はこういいます。


「君たちは、いろんな目にあっている。私たちは、それを想像するだけだからね。見当はずれだったり、甘かったりしてしまうかもしれない。君たちは、丈夫で歩き回れる尾島君と妹にとりついて、迷惑をかけてやろうとした。車椅子の人間が、どんな気持ちで生きているか、思い知らせてやろうとした。それをいいとは言えない。そんなふうに恨みをぶつければ、結局は自分が傷つく。しかし、だからといって、アタマから人に迷惑をかけるなと、聞いたふうな説教はできない。あの晩には、まだそれほど考えが熟さなかったが、いまの私はむしろ、君たちに、迷惑をかけることを恐れるな、と言いたいような気がしている。これは私にも意外な結論だ。人に迷惑をかけるな、というルールを、私は疑ったことがなかった。多くの親は、子供の、最低の望みとして「人にだけは迷惑をかけるな」と言う。のんだくれの怠けものが「俺はろくでもないことを一杯してきたが、人様にだけは迷惑をかけなかった」と自慢そうに言うのを聞いたことがある。人に迷惑をかけない、というのは、今の社会で一番、疑われていないルールかしれない。しかし、それが君たちを縛っている。一歩外に出れば、電車に乗るのも、少ない石段を上るのも、誰かの世話にならなければならない。迷惑をかけまい、とすれば、外に出ることが出来なくなる。だったら、迷惑をかけてもいいんじゃないか? もちろん、いやがらせの迷惑はいかん。しかし、ぎりぎりの迷惑は、かけてもいいんじゃないか。かけなければ、いけないんじゃないか。君たちは、普通の人が守っているルールは、自分たちも守るというかもしれない。しかし、私はそうじゃないと思う。君たちが、街へ出て、電車に乗ったり、階段を上がったり、映画館へ入ったり、そんなことを自由に出来ないルールは、おかしいんだ。いちいち、うしろめたい気持ちになったりするのはおかしい。私は、むしろ堂々と、胸をはって、迷惑をかける決心をすべきだと思った。」
それまでうなずいて聞いていた川島はそこではじめて口を開く
「そんな事が通用するでしょうか」と。
そして吉岡は続ける。
「通用させるのさ。君たちは、特殊な条件を背負っているんだ。差別するな、と怒るかもしれないが、足が不自由だということは、特別なことだ。特別な人生だ。歩き回れる人間のルールを、同じように守ろうとするのは、おかしい、守ろうとするから歪むんだ」


この後、川島が昔、親にトルコ(今で言うソープランド)に行きたいといった話をする。これがまた感動的なんですが、多感な時期にこのドラマを見て、いろんな事を考えました。


 観た事のない方、機会があれば是非観てください。感涙の、そして自分はどう生きるかを考えさせられる名作です。

男たちの旅路 第4部-全集- [DVD]

「ボクが処刑される未来」

ぼくが処刑される未来 [DVD]
 2012年東映小中和哉監督

  主演は「仮面ライダーフォーゼ」でデビューした福士蒼汰くん。この作品は、スーパー戦隊シリーズ仮面ライダーシリーズの主演俳優の更なるステップアップのために企画された「TOEI HERO NEXT」シリーズの第2弾。この後出演した「あまちゃん」の種市先輩役で人気を不動のものとする直前という意味でも興味深い。

 
 突然、光に包まれた大学生、浅尾幸雄(福士蒼汰)は、警察の取り調べ室にいて、殺人を犯したので裁判にかけられるという。身に覚えのない殺人。それもそのはず、殺人は25年後に起き、今幸雄のいるのはその25年後の世界。つまり未来に犯す犯罪の為に過去から連れてこられて処刑されるという。
 この時代、死刑制度は廃止されているが、遺族を救済するために「未来犯罪者消去法」が制定されていた。それは、過去から罪を犯す前の犯罪者をタイムスリップさせて、公開処刑することによって遺族の心の傷を癒し、また、過去の人間を消去することで平行世界を作り出し、そちらの事件発生を未然に防ぐという制度であった。
 本当に幸雄は殺人を犯したのか。留置されている幸雄のもとに「自分の無実を証明したいなら自分で未来を切り開け」という脱走の手助けをする男が現われる。この男は「仮面ライダーフォーゼ」で仮面ライダーメテオを演じた吉沢亮くん。幸雄は自分の冤罪を晴らせるのか、そして元の世界に戻れるのか、って話。幸雄の担当弁護士役は「がんばっていきまっしょい」TV版の田中ちえみ役の関めぐみ


 87分と短い事が奏功して、ダレることなく一気に観れます。時期的に「裁判員制度」が始まる頃で、その要素も絡めて未来での伏線を現代で回収しているというのも、最後「なるほどそういうことか〜」と納得。
 

 「−フォーゼ」の主人公が癖のある役だったので、一般受けする俳優への橋渡し役としてはとても良かったと思う。
 「−フォーゼ」観ていてこの作品観ていない人は是非。

 


 

「激動の昭和史 沖縄決戦」を観る。

激動の昭和史 沖縄決戦 [東宝DVDシネマファンクラブ]
 1971年東宝制作・岡本喜八監督。

 
 エヴァンゲリオン庵野監督絶賛の1本で昔から観たかったんです。amazonで買っちゃいました。
トップをねらえ!」で「宇宙が黒く見えない」や「敵が7分で黒が3分 、いいか 敵が7分に黒が3分だ」というセリフが出てきますが、その元ネタがこの映画。

沖縄上陸に際して、
 斥候の賀谷支隊長が指令本部に無線でこう伝えます。
「本島西海岸一帯は米艦艇のため海の色が見えない!!」
三宅忠雄通信参謀「何!? 海の色が!? それじゃわからん!!」
賀谷支隊長「船が七分に、海が三分! 船が七分に海が3分だ! わかったか!!」

 東宝好きな私としては、オールスターキャスト、特殊技術は中野昭慶、美術は村木与四郎ときてはいやがうえにも盛り上がります。
 メインキャストは、小林桂樹丹波哲郎仲代達矢ですが脇に加山雄三天本英世岸田森、女優では酒井和歌子大空真弓が出てました。


 ただ、そういう不謹慎な気持ちで観るには重い映画でした。149分、途中でインターミッションが入ります。
 太平洋戦争での激烈な地上戦は数あれど、沖縄戦以上に本土に肉薄した闘いはない。しかも沖縄県民の1/3が軍属、民間人問わず死亡したという。上陸軍の攻撃だけでなく、集団自決で死んでいったものも多い。集団自決シーンでは、1個の手榴弾を持ち家族が寄り添い点火し、最後死に切れなかった者同士で殺し合っていた。また、直前に迫った米軍兵士の捕虜になる位ならと家長が子どもの首元に鎌を立て頸動脈を切る。撤退を与儀なくされた野戦病院では、歩けないものは、毒薬と一緒にその場に残していく。追いつめられた女学生たちが先生から薬をもらい飲みほして苦しんで死んでいく。筆舌に尽くしがたいシーンの連続で観るに堪えないけど、これが戦争。。


 対比するように大本営では、沖縄守備隊の要求を悉く拒否し、本土決戦の時間稼ぎ位にしか思っていない。まさに「事件は現場で起きているんだ」という感じ。
 そんな中、自分の職務を全うしようとする大人たちがいる。
内務官僚だった島田叡(しまだあきら/神山繁)は、大阪府内務部長から沖縄県知事の内示を受ける。 戦火激しい中、なんとかして県民を守ろうと東奔西走する。当時、軍のいうことは絶対だったにもかかわらず、軍の作戦にまで口を出して県民を守ろうとする姿勢は涙なくしては見れない。
 もう一人は太田実海軍中将(池部良)。
 常に沖縄を守備すべく動いた人であり、最後の海軍次官にあてた通信電文はつとに有名です。以下その電文を転載します。


 発 沖縄根拠地隊司令
海軍次官
左ノ電□□次官ニ御通報方取計ヲ得度
沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ
沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇ナカリキ
然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト家財ノ全部ヲ焼却セラレ僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難尚砲爆撃ノガレ□中風雨ニ曝サレツツ乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ
而モ若キ婦人ハ卒先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦烹炊婦ハ元ヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ルモノアリ
所詮敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ親子生別レ娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ
看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ衛生兵既ニ出発シ身寄無キ重傷者ヲ助ケテ敢テ真面目ニシテ一時ノ感情ニ馳セラレタルモノトハ思ハレズ
更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住居地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ
是ヲ要スルニ陸海軍部隊沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン
糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ
沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ


(口語訳)
沖縄県民の実情に関して、権限上は県知事が報告すべき事項であるが、県はすでに通信手段を失っており、第32軍司令部もまたそのような余裕はないと思われる。県知事から海軍司令部宛に依頼があったわけではないが、現状をこのまま見過ごすことはとてもできないので、知事に代わって緊急にお知らせ申し上げる。
沖縄本島に敵が攻撃を開始して以降、陸海軍は防衛戦に専念し、県民のことに関してはほとんど顧みることができなかった。にも関わらず、私が知る限り、県民は青年・壮年が全員残らず防衛召集に進んで応募した。残された老人・子供・女性は頼る者がなくなったため自分達だけで、しかも相次ぐ敵の砲爆撃に家屋と財産を全て焼かれてしまってただ着の身着のままで、軍の作戦の邪魔にならないような場所の狭い防空壕に避難し、辛うじて砲爆撃を避けつつも風雨に曝さらされながら窮乏した生活に甘んじ続けている。
しかも若い女性は率先して軍に身を捧げ、看護婦や炊事婦はもちろん、砲弾運び、挺身斬り込み隊にすら申し出る者までいる。
どうせ敵が来たら、老人子供は殺されるだろうし、女性は敵の領土に連れ去られて毒牙にかけられるのだろうからと、生きながらに離別を決意し、娘を軍営の門のところに捨てる親もある。
看護婦に至っては、軍の移動の際に衛生兵が置き去りにした頼れる者のない重傷者の看護を続けている。その様子は非常に真面目で、とても一時の感情に駆られただけとは思えない。
さらに、軍の作戦が大きく変わると、その夜の内に遥かに遠く離れた地域へ移転することを命じられ、輸送手段を持たない人達は文句も言わず雨の中を歩いて移動している。
つまるところ、陸海軍の部隊が沖縄に進駐して以来、終始一貫して勤労奉仕や物資節約を強要されたにもかかわらず、(一部に悪評が無いわけではないが、)ただひたすら日本人としてのご奉公の念を胸に抱きつつ、遂に‥‥(判読不能)与えることがないまま、沖縄島はこの戦闘の結末と運命を共にして草木の一本も残らないほどの焦土と化そうとしている。

食糧はもう6月一杯しかもたない状況であるという。
沖縄県民はこのように戦い抜いた。
県民に対し、後程、特別のご配慮を頂きたくお願いする。


 この映画は沖縄が日本に復帰する1年前に制作されています。アメリカに統治されていて反感を買われては困るので、この映画の存在を知らない沖縄の人も多いそう。沖縄の人は勿論、最近近隣諸国との領土問題できな臭い雰囲気が出てきて、交戦是認を叫んでいる人に見て欲しい作品です。
 過剰な演出もない代わりに、恐らく現実はもっと悲惨だったと感じさせる作品。
 2時間半釘付け。



 

「白昼の死角」を観る。

白昼の死角【DVD】

 1979年角川映画村川透監督
 戦後の混乱期に「光クラブ」という金融事件がありました。代表は東大生の山崎晃嗣。混乱が落ち着きはじめ物価統制令違反で逮捕されると業績が急激に悪化、債務不履行で山崎は青酸カリ自殺をしてしまう。この実際にあった事件をベース(映画では「太陽クラブ」)に、その残党だった鶴岡八郎(夏木(夏八木)勲)を中心としたグループが、数々の詐欺事件を起こすというピカレスクストーリー。

 当時の東映は、実録ヤクザ映画が一段落した頃。出てくる役者がやくざ者を演じたひとばかりで、どう見ても堅気には見えない。騙される成田三樹夫、地検の室田日出男、腹に一物持ってそうな佐藤慶を見ても、「どう見ても騙される方が悪いんじゃね?」と思ってしまい、当然、肩入れするのは夏八木勲の方だったりします。鶴岡を追いかける東京地検の検事、天地茂も肩入れするには目つきが鋭すぎて怖い。鶴岡の暴力ではなく"頭"で金をつかんでいく姿は見ていて決して嫌ではありません。そういう夏八木に惚れる女、綾香(島田陽子)もすごく綺麗。この時が島田陽子の絶頂期だと思う。
 ダウンタウンブギウギバンドの音楽も良い。上映時間は2時間半を越えますが、飽きずに最後まで一気に観れます。

 
 メディアミックスで売れてはいましたが、決して当時は作品的評価は高くなかった角川映画も30年以上経過をして、やっと"こなれてきた"感じ。時代が追いついてきたのかもしれません。

 
 TSUTAYAでは、今「昭和キネマ横丁」として昭和の名作を続々レンタルしていてこれもそのうちの1作として初レンタル化されていたもの。「白昼の死角」は昔ビデオで見たことがありますが、こうして昭和の名作を掘り起こしてくれる企画はとても有難い。良い時代になったものです。。