1989年。昭和が終わり平成になった年。足立区綾瀬で発覚した最悪の事件。既に20年以上が経つけど、これ以上の酷い事件はないでしょう。
偶然本屋で手に取り、あっという間に読んじゃいました。事件そのものの描写はそれほど多くなく、起訴された4人の少年の生い立ちが丁寧に書かれています。
彼らの生い立ちは決して幸せなものではなかったかもしれない。この凶行に至った経緯をみると、いくつもの分岐点があって、その分岐点で、まっとうな道を歩む為に必要な判断力がないだけでなく、強く教導する存在、親や教師や先輩がいなかった。
恐らく生きていると色々な分岐点がある。でもそこを踏ん張って、なんとかまっとうに生きてる。そんな人ばかりだと思う。楽な方へ楽な方へ流れた結果が、人を人とも思わない恐ろしい事件になった。
「昔はワルだった」とか言って更生した人は確かに偉い。でも世の中の殆どの人は、悪い道・楽な道に流されそうになるのを踏みとどまっている。どっちが偉いか、自明だ。「ワル」であった時周りにかけた迷惑の償いはどんなに更生しても償いきれるものじゃない。
被害者に至っては、もう何が何だかわからないまま、40日間も監禁され、殺された。事件後の解剖結果では、脳が委縮していたという。恐怖と痛みから脳が自ら活動を停止する「自死」という状態だったという。意識的に自殺するわけじゃない。耐えられない痛み、苦しみを受け続けることで、無意識のうちに生命活動を停止する命令を脳が選択するということ。そんな地獄がこの世にあるんだ…。
そんな犯人達は少年法の壁に守られ、全員が出所している。罪を悔い静かに暮らしているかと思えば、サブリーダークラスのAは、またも犯罪を犯し、再逮捕されている。
人間の闇はどこまでも暗い。そんなことを思いました。この犯人たちに光が射すことはあるのかな。
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