日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「越境者 松田優作」 を読む。

 松田優作。享年40歳。まさに走りぬけた感のある人生。今は息子が活躍する時代となっていますが、松田優作そのものもまだ輝き続けています。
 この本は、前妻の『完全なる飼育』などの代表作を持つ作家・松田美智子によるルポルタージュ。もっとも身近な人の手によるノンフィクション。
 松田優作に関する著作を読んだのは、
 「松田優作 炎静かに」山口猛
 「蘇える松田優作大下英治
 に続き3作目。これらは松田優作を追いかけるには、参考になる本ではありましたが、今回の松田美智子の本は、さらに松田優作の真の姿に迫っています。
 松田優作通名でした。本名は金優作。帰化したので松田優作となりましたが、在日朝鮮人を母に持つ彼もまた在日としての半生を歩んでいました。生まれたのは山口県下関市のかつて娼館の立ち並ぶ街。そんな生い立ちのコンプレックスをばねに不世出のスターとなった。彼の演技に賭ける情熱は、観る者の心を打つ。そこにはごまかしたり諦めたりする事を決して許さない表現者としての真摯さがひしひしと伝わってくる。だから何を観ても面白いし、彼が画面に現れると緊張感すら漂う。一切の妥協を許さない姿勢。
 ただ、松田優作は幾度かの暴力事件を起こしているが、「殴られた相手よりも殴った自分の方が痛い」とか言うのはどうかと思う。言っている意味は分かる。制作現場で作品に対する想いの違いが彼を暴力に走らせた事も1度や2度ではない。作者も妻として何度もこの言葉をいわれ殴られている。ある時松田美智子はこういい返す。
 「いいえ、殴られた方が痛い。あなたのはこころの痛みだろうけど、私は心の傷の上に身体の痛みもある。私の方が二倍痛いのよ。」と。
こういう事が言える妻と別れ、若い女と結婚する。熊谷(現松田)美由紀だ。松田優作は弱い人間だと思う。でも結局その弱さを表には出せず、常に気を張って生きてきた。
 私には彼のような生き方はできない。だからこそ彼のような生き方に憧れるのです。

越境者 松田優作 (新潮文庫)

越境者 松田優作 (新潮文庫)