日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

思ったこと、思っていること。読んだ本、観た映画、TV。聴いた音楽…。会社でのこと、家族のこと、自分のこと。日々のうつろいを定着させています。はてなダイアリー開始は2003年、2006年4月から毎日更新継続中。2017年6月8日「はてなblog」アカウント取得、2019年1月「はてなダイアリー」から正式移行しました。アクセスカウンター2019年01月26日まではpv(2310365)です。

「窓鴉 式貴士抒情小説コレクション」 を読む。

 式貴士と言っても知ってる人は少ないんだろうなぁ。91年に亡くなっていますので、今年でもう没後21年になります。
 当時埼玉県の志木市で一番高いマンションに住んでいたので"式貴士"というペンネームにしたとか。式貴士はSF作家の時のペンネームですが、一番著作が多いのは、「蘭光生」名義で二見書房、フランス書院文庫で書かれた官能小説でしょう。更に間羊太郎名義で、推理小説の名著「ミステリ百科事典」を、小早川博名義で雑学本を、そして、ウラヌス星風名義で星占いまでしてた、まさに博覧強記の人。
 私は、角川で文庫化され始めた時に、式貴士のSF作品に初めて触れました。第1短編集の「カンタン刑」。その衝撃はすごかった。いまだに史上最高の刑罰は「カンタン刑」以外にはないと信じています。読んだことのない方は、今回の「窓鴉」と同じ光文社文庫で、新しく編まれた「カンタン刑 式貴士怪奇小説コレクション」が出ていますので是非読んでください。
 さて、今回の「窓鴉」は副題にもある通り、式貴士の作品のなかでもセンチメンタルで抒情的な小説13篇を集めた作品集です。「カンタン刑」のような奇想天外な作品群も嫌いではないのですが、どちらかと言えば、今回のようなリリカルな作品の方が好みです。
なかでも「マスカレード」というお話が特に好きです。
 小さい頃から精神感応(テレパシー)で会話をしていた少年と少女が、大人になるにつれて疎遠になっていく。原因は、男の子が夢の中でジギル博士とハイド氏のように彼女を襲ってしまったこと。テレパシーでの交感を止めてしまった2人。長ずるにつれて女の子はとてもきれいな女性になる。彼も彼女もお互いを想い続けてたのに、なかなか言い出せない。ある日、彼は彼女にプロポーズをする。その結果は…。って話。表題となっている「マスカレード」は、薔薇の名前。最初は、黄色い花だけど、花が開き進むと徐々に赤くなるという不思議な品種。黄色い薔薇の花言葉は「臨みなき愛」赤い薔薇は「愛の告白」。子どもの頃2人は植物採集に出掛けて、そこで博識な彼から花言葉を教えてもらうんですね。Say It With flowers、花で語らしめよと。
 結末は、言わないでおきましょう。なかなか衝撃的です。
 窓に住む大鴉の力を借りて、好きな人と仲よくなる表題作「窓鴉」、だんだん若くなっていく病気にかかってしまう「Uターン病」等、どれを読んでも「あっ」と思わせ、最後に切ないほどの哀しみとひとを愛する切なさに溢れる作品ばかりです。
 私的に良かったのは、未読の最終作品集「天・虫・花」から4篇入っていたこと。角川で文庫化されなかった「アイス・ベイビー」「なんでもあり」は持っていたんですけど、「天・虫・花」だけどうしても探せずもう読めないかと思っていたので、今回表題作の「天・虫・花」を含む4篇が読めたのは良かったです。
 できれば、以前の角川文庫版では「長いあとがき」が入っていなかったりと不完全だったので、この作品集が売れて、光文社文庫で全作品集の文庫化されることを期待します。

窓鴉―式貴士抒情小説コレクション (光文社文庫)

窓鴉―式貴士抒情小説コレクション (光文社文庫)

一応「カンタン刑」も。既にこの作品集も絶版らしく市中在庫のみらしい。見つけたら即買いです。(BOOKOFFにたまに出てます)
カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫)

カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫)