吉村 昭著・ 新潮文庫
平成も残りわずか、積んでる作品の消化に努めていますが、全然減らない…。
「破獄」や「熊嵐」「高熱隧道」など、徹底した取材で重厚な作品が有名な吉村昭の、10枚に満たない21の掌編を集めた作品集。ショート・ショートのようにオチがあるわけではないですが、恐らく取材途中で体験した内容ではないかと思われる作品も多く、はっとさせられる。
小説はどんな長編であっても人生の断片を描くだけで、主人公の人生全てを描くことはない。それでも、書いていればあんなこともこんなことも書きたいと思い、逆にダラダラと続いて読者に飽きられる。
そういう意味では、この作品集のようにほんの一瞬を切り取り、その前後を読者に委ねることの方が想像力を掻き立てる。それも吉村昭のような名人が切り取るからこそ。物語の面白みを十分感じさせてくる名短編集です。
吉村作品を詠んだことのある人は勿論、読んだことのない人の入門編としてもよい。

- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/24
- メディア: 文庫
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