日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「エロティックス」

エロティックス (新潮文庫)
杉本彩編・新潮文庫
官能小説・詩集から12の作品を編んだアンソロジー
25年位前、団鬼六が「花と蛇」をはじめ、幻冬舎文庫にかなりの作品が収められた時、ほとんど読んでいました。角川文庫で「花と蛇」が文庫化された時、平井和正が「邪悪な悪魔小説と一緒に並べられたくない」と激怒、角川から作品を引き上げとということがあって、逆に「花と蛇」に興味をもったのが団鬼六に興味を持ったきっかけでした。平井和正だって初期の作品は充分官能的で邪悪な描写があったんですけどねぇ。
 その後、蘭光生がSF作家の式貴士と知り、そのほとんどの作品が収められていたフランス書院文庫を結構読みました。ただ、直接的な性描写というのは昔からさほど好きではなく、どちらかといえば、心の交感を描いている方が好きかも。鬼六作品も蘭光生作品も、SM小説ですから性描写SM描写はあるのですが、被虐の痛みや激しい描写ではなく羞恥を中心とした官能描写が多く十分官能的でした。

 そういう意味では、1作目の田辺聖子「雪の降るまで」はよかった。
 京都の奥座敷にある小さな旅館で結婚しない女と旦那が逢瀬を重ねる。食事をして寄り添っていると外では雪が降ってきている。ただそれだけなのに2人の関係が心に沁みてきます。
 花村萬月の「崩漏」も女衒のような女たらしの加賀が銀座で知り会った真莉亜という美しい女。ところがこの女、少しおつむが緩くその上重度の覚醒剤中毒だった。何とかヤク中から抜け出す手伝いをし、ソープランドに前金をせしめて売りとばしたら、実は崩漏で何人も男を受け入れることのできない身体だった。それでも加賀の為に仕事を続けるという真莉亜が愛しくなって逃避行をする話。これもエロい話ではあるけど純粋な愛を感じます。
 団鬼六「不貞の季節」は、新潮文庫で以前読んだ自伝的小説。鬼六の妻がこともあろうに鬼六の最も信頼していた部下に寝取られた話。妻と関係をした後、寝取られた細かな描写を話させ、録音させて興奮することを止められない鬼六氏。結局妻とは離婚することになるのだが、倒錯した愛の形がユニークだったりします。
 谷川俊太郎の詩も収められていますが、直接的な「なんでもお〇〇こ」という作品。そのものずばり単語(私は気が弱いので伏字にしちゃうけど)が題に使われていて驚き。詩集「夜のミッキーマウス」所収のこの作品のほか2編が収録されていますがどれもこれまで知っていた谷川俊太郎の詩とは思えないほどドキドキしてしまいます。
 官能小説って、手に取るのも恥ずかしいですし、電車読書の私としては、後ろから覗かれて「こいつエロい本読んでんな」と思われていないかひやひやしながら読んでます。
 ただみんなそういう世界は知らない風な顔して日々生活していますが、程度の差こそあれ実はみんな知っているという二重生活を誰しもが営んでいるというのは、すごく興味深い。表の世界だけの充実では人は測れない。裏の世界も充実していてこそ人の深み厚みが形成されるものだと思うのです。
 
 

エロティックス (新潮文庫)

エロティックス (新潮文庫)