日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「恋の罪」 を観る。

 2011年園子温監督。

 年の初めに見る映画じゃなかったな…。
 園子温監督作品は、「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」と観てきましたが、どうもこの監督の作品は好きになれません。しかし、引き付けられるのもまた事実だったりします。
 

 「恋の罪」は、1997年に発生した、俗に「東電OL殺人事件」と呼ばれる事件を材に取った作品。最近、有罪判決を受けたゴビンダ被告が再審され無罪判決が確定したことでも知られています。
 地位や名誉を持つエリート女性が、夜になると"立ちんぼ"をしていたという衝撃的な事件でした。
 今回の映画の冒頭で、マネキンと女性の肢体を分割し2体の身体にした猟奇的な死体が、渋谷区円山町にある廃墟アパートで発見されるところから始まります。その事件を追う刑事が、吉田和子水野美紀)。そこに、昼間は大学教授をしているが夜になると派手なメイクをして渋谷の街に立つ女・尾澤美津子(冨樫真)と、大好きな有名小説家と結婚して幸せいっぱいの貞淑な妻・菊池いずみ(神楽坂恵)の3人の人生が交錯していきます。
 

 この映画の登場人物は、そろいもそろってき○がいばかり。まともそうにみえる水野美紀も旦那の後輩と不倫していてほぼ奴隷状態。神楽坂恵は、これまでの園子温監督作品同様汚れ役だと思っていたら、案の定今回も豊満な肢体を惜しげなく晒してくれる。もっとも、今回は、当初の貞淑な妻ぶりがあまりにも徹底していて、いつもの画面に出てきたときから淫蕩な感じとは大きく異なってとてもいい女優さんになったなぁと感じました。冨樫真は、もうインパクト強すぎで嫌な意味で"夢に出てきそう"な感じ。主役3人以外も彼女たちに絡んでくる男がどいつもこいつも変態ばかり…。


 ただね、結局人間なんて一皮むけばこういう猥雑なものをみんな抱えているというのも一方で事実だと思う。怪我をすれば血が出るし、甘い誘惑に負けてしまったり。そういう猥雑な自分と向き合うことも人生のなかで大切な事。園監督の映画が、奇妙な魅力を持って嫌いと言いながら次々と作品をみてしまうのはそういう事が根底にあるから。しかし声を大にしてお勧めできないのも、同じ理由。


 マーラー交響曲第5番第4楽章「アダージェット」が、効果的に使われています。元々1971年ビスコンティ監督の「ベニスに死す」の劇中曲として使われているのが最も有名ですが、私的には、伊丹十三監督「タンポポ」で使われていた時に知りました。


 映画の中でゴミ収集車を追い掛けていく人妻の話というのがあります。
 「とある主婦が、朝、ゴミ収集車がやってきた時、生ゴミをいれた袋をもって家を出たんですが、間に合わなくてゴミ収集車が行ってしまう。この時、この奥さんは諦めずに追いかける。次の回収場所でゴミ収集車が止まる。間に合うと思い走って行くともうちょっとのところでゴミ回収車は行ってしまう。悔しくなってまた追いかける。これを繰り返しているうちにこの奥さん、やがて普段あまり来ない街にきてしまう。その時にふと「今まで何やってきたんだろう…」と思ったんですって。「ずいぶん遠くまで来たなぁ」って。でもそれは、ゴミ回収車を追い掛けてきたことじゃなくって、今までぼんやり生きてきた自分の日常の事なんです。で、ハッと気がついて、その奥さん失踪しちゃったんですって」


 144分と長い作品なので、時間がある時、更に、多少元気がいい時に観ないと魂吸い取られますのでご注意を。
 

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