2010年に金子修介監督によって映画化されていて、お気に入りの作品。本屋に言ったら偶然この原作本を発見し即購入、あっという間に読んじゃいました。
大学生の"ヒデ"がバイト先で知り合った"額子(がくこ)"。年上の額子は、ヒデを"大人の世界"に導く。溺れるヒデ。ある日、公園に連れて行かれたヒデは下半身を露出させられて木に に縛りつけられ放置される。新手のプレイ?「結婚するんだ、私」そういって額子は去っていく。下半身露出して木に縛りつけられたヒデを残して。
映画では、その後額子と別れが引き金となってアルコール依存症になるような描かれ方をしていますが、原作はどうもそれだけではないみたい。昼間から酒を飲み、仕事を欠勤し、同棲していた彼女に逃げられ、挙句の果てに交通事故を起こすヒデ。「ばかもの」です。
そして10年後、再会した額子は、片腕を失くしまだ30代にもかかわらず髪の毛が白髪になっていた。
冒頭しばらくしてから、額子からヒデに向かって発せられる「ばかもの」。そしてラスト今度はヒデから額子に向かって発せられる「ばかもの」。この2つの「ばかもの」の間に横たわる2人の人生。
結局人なんて多かれ少なかれ「ばかもの」なんです。男も女もどこか足りなくて、その足りないものを埋め合わせることで生きていく。それは古事記の時代から同じで、イザナギイザナミの国生み神話なんて、イザナギは「あなたの体はどんな風に出来ているのですか?」とイザナミに尋ねると、「私の体は、一つだけ足らないところがあります」と応えました。イザナギは「私の体は、一つだけ余っているところがあります。私の余っているところと、貴女の足らないところをあわせてみたらどうでしょうか?」なんていう。肉体的なことではありますが、精神的にも足りたり余ってたりする、それが人間なんだと。
額子とヒデのその後は描かれていませんが、辛い事を沢山経験した分、幸せになって欲しいなと思わせます。
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