日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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[訃報]平井和正。。

 
 ついに平井和正の訃報を書く日がこようとは…。
 日本SFの面白さ、小説の面白さを教えてくれたのは平井和正でした。小学校高学年の頃、初めて手にしたのが当時角川文庫で出ていた平井和正の短編集「魔女の標的」「怪物はだれだ」でした。その後出ている平井作品を続々と読み始めます。作家買いをした初めての作家さんでした。
 一時平井作品から離れましたが、幻魔大戦から再度平井ブームに突入。アニメ化決定を受けて角川版の1-4巻の表紙が大友克洋になったのを機に「幻魔大戦」を読み始めました。以降角川文庫で発刊された全ての作品、トクマノベルス・文庫の「新幻魔大戦」「真幻魔大戦」、NONNOVELのウルフガイシリーズと貪るように読んでいました。ウルフガイシリーズは、ハヤカワSF文庫版も買いましたっけ。

 90年代前半の全集は出版社倒産の為途中で刊行中止になりましたが、半分くらいは買いました。「地球樹の女神」「ボヘミアンガラス・ストリート」は、これまでと全く作風の違う青春小説で、当時社会人になっていた私としては、気持ちの乖離が大きくなり、これらの作品を最後に殆ど読まなくなっていました。それでも「月光魔術団」「インフィニティブルー」や「時空暴走気まぐれバス」など新作が出るたびになんとなく読んではいましたが、昔ほどの熱を帯びる事はありませんでした。

 ちょうどこの頃から、電子出版を模索していた平井和正。インターネット黎明期でもあり、その取り組みはかなり早かったと思います。電子書籍のe文庫で幻魔大戦の続編「月光魔術団 幻魔大戦DNA」や「幻魔大戦deep」が出ているのは知っていましたが、いまだに読んでいません。


 一般的には「エイトマン」の原作者であり、「幻魔大戦」の作者であり、ちょっと古いSF好きには「ウルフガイ」シリーズの作者といったところでしょうか。初期(虎の時代)中期(狼の時代〜天使の時代)晩期(…ウルフガイ再開からの時代?)と目まぐるしくその作風を変えた作者でもありました。
 私的には、狼の時代〜天使の時代が一番楽しく読めていました。「死霊狩り(ゾンビーハンター)」は元はマンガの「デスハンター」を小説化したもので、小説版のゾンビー島爆発以降の話がマンガではあります。それもこれから…てとこで終わってますけど。「サイボーグブルース」もエイトマンの小説化ではありますが、主人公がアーネスト・ライトという黒人サイボーグ捜査官でエイトマンのダークなイメージをより深くしたものでかなり好きな作品でした。「狼の紋章」から始まる少年ウルフガイ。タイトルからして人をくったような「狼男だよ」。寝る間を惜しんで読んでました。
 そして「幻魔大戦」。角川版を先に読み、並行して徳間書店の「新幻魔大戦」「真幻魔大戦」と読んでいたのは大学生の頃。全て中断したままで結局最後が描かれる事はありませんでしたが、あの時間違いなく寝るのを忘れて読み耽ったものです…。


 沢山の好きだった作家が亡くなり、沢山の作品が未完で終わっています。確かに未完で終わるのは哀しい事ではありますが、完結したからといって読者が思ったような結末を迎えるとは限りません。平井和正の「(ヤング)ウルフガイ」シリーズも1971年に第1作「狼の紋章」が書かれ、その後75年までに「狼の怨歌」「狼のレクイエム第1部第2部」と書かれ最高潮に盛り上がりました。しかし84年に9年振りに続編「狼のレクイエム第3部 黄金の少女」(刊行は85年から全5巻)、95年に「狼のレクイエム第4部 犬神明」(全10巻)として完結しましたが、20年の歳月は、作家が当初描こうとしたものが本当にこういうものだったのかと疑わざるを得ませんでした。
 言霊使いを自ら標榜する作家さんでしたが、本質的には収拾の付かなくなる長編よりも短編の方が面白かったというのが私的な結論です。特に処女作で1962年に書かれた「レオノーラ」(宇宙塵発表、その後SFマガジンに転載)は大好きな作品。いまでも日本SFアンソロジーとかに時代の代表作として収録されています。改めて書く機会もあろうかと思いますので、今回は触れません。


 本当に好きな作家さんでした。自分の精神形成のかなりの部分は平井作品によって形成されたといっても過言ではありません。
 ご冥福をお祈りいたします。