西村雄一郎著・ 講談社文庫
小津安二郎が亡くなったのは1963年、私が生まれる前。邦画好きを名乗る上では避けては通れない監督なので、代表作は一通り観ています。小津監督は戦前のサイレント時代から松竹蒲田で映画を作っており、全54作品にものぼる(フィルム現存が確認できない17作あり)。中でも、やっぱり良いなぁと思うのは、原節子の出ている「晩春」「麦秋」「東京物語」「東京暮色」「秋日和」「小早川家の秋」。もっといっぱい組んでいるのかと思ったら6作だけなんですね。
特に原節子が"紀子"という役名で演じている「晩春」「麦秋」「東京物語」は「紀子三部作」といわれており、私もこの3作は繰り返し観てます。
正直、若い頃に見た時は退屈な映画だと思っていたのですが、自分が親元を離れて所帯を持ち人の親になり、親が歳をとり、子供たちが成長してくると、作品の良さが分かってきます。だから、無理して小津作品を観る必要はなく、それなりに年を重ねてから見るのをお勧めします。
この本は、小津安二郎と原節子、2人を取り巻く物語を時系列に沿って語られています。2人とも生涯独身を貫き、1963年に小津監督が亡くなって以降、原節子は小津の愛した北鎌倉で隠遁生活に入り、2015年に亡くなるまで、一切人前に出てくることはありませんでした。
映画監督と主演女優の結婚はよくある話で、小津と原節子も結婚をしていてもおかしくはないし、周りの関係者も結婚するものだと思っていた人もいた。でも2人は結婚しなかった。
結婚することが愛の結論とはしなかった2人は正に"殉愛"に相応しい人生だっと。
- 作者: 西村雄一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: 文庫
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