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「秋刀魚の味」 を観る。

1962年松竹・小津安二郎監督
「秋刀魚の味」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

 今日は小津監督の誕生日。googleTOPが「東京物語」の名シーンに変っていて久しぶりに小津作品が観たくなったので。

 「秋刀魚の味」は、小津監督の遺作となった作品。テーマはこれまで何度も描かれている娘の結婚に揺れる父と娘の関係。笠智衆の父親に、これまで原節子が演じていた娘役を、「秋刀魚の味」では岩下志麻が演じています。これが美しいのなんの。


 妻に先立たれた平山(笠)には、24歳の娘路子(岩下志麻)がいてまだ学生の弟と父の為、家事をしている。ある日平山の元に学生時代に友人、川合(中村信郎)がやってきて、「縁談があるから路子ちゃんにどうか」と言ってくる。娘の結婚なんて考えていなかった平山は、最初断る。もう一人の友人堀江(北竜二)が恩師"ひょうたん"(東野英治郎)に偶然逢って、同窓会を催す事になる。"ひょうたん"は先生を辞めラーメン屋を娘(杉村春子)に手伝ってもらっているが、妻を失くし娘を重宝に使っているうちに婚期を逃してしまった事を悔いている。そんな様子をみて平山は路子に結婚を勧めるようになる。無事結婚式を終えた後、行きつけのバーで一人飲む平山に寂寥感が漂う。とまぁそんな話。
 先生との2回目の飲み会の時に、すっかり酔った先生は、娘を手放せなかった事を悔み、これまでの人生を振り返り「私は寂しい。寂しいんじゃ、哀しいよ。結局人生はひとり、ひとりぼっちです」というのがグサリとくる。


 今のドラマのように過剰な演出はなく淡々と話は進んでいきますので、若い人には物足りなさを感じるかもしれません。かくいう私も最初にこの映画を観た時さほど面白みを感じませんでした。これは小津作品全般に言えることですが。しかし人の親になり、まさに娘を嫁に出すような年齢(まだ早いけど)になると、この物語は静かに心に沁みてきます。
 
 
 独特のカメラワーク、台詞回しは小津映画独特で最初に観た時違和感を覚えましたが、慣れるとこのリズム感が妙に心地よくなってきます。市井の人々をありのままに描く。私たちだって映画みたいにドラマチックな日常を送ってるわけじゃない。だからこそ活劇を求める気持ちがある一方で、こういう日常の心の揺らめきを感じたい気持ちもある。
 この作品が作られたのが昭和37年。まさにリアルな「3丁目の夕日」の世界です。「3丁目―」は「3丁目―」で面白かったんですが、「秋刀魚の味」の同時代性には及ぶべくもなく、同じ作りものであるはずなのに心の動き、描き方に対するアプローチが全く異なる。これが監督、脚本、俳優の力の差かと改めて感じる作品です。

 年齢や状況を選びますが、私的にはお勧め。

↓予告編です。 なんか煽りすぎw