周防正行監督の初監督作品。映画のタイトルは「変態家族 兄貴の嫁さん」。日活ロマンポルノ作品です。タイトルだけで誤解されると怖いので、あえて台本名をblogのタイトルにしました。とはいえ、まぎれもなくこれは、ポルノ映画です。
ただ、内容的に興奮する映画かというと正直微妙。確かにリビングで家族と一緒に観れる作品ではありません。しかしながら、周防監督が「名監督小津安二郎に如何に近付けるか」をテーマに作った作品なので、そこかしこに小津風の演出がされていて、小津映画に少しでも触れた人にとっては、楽しく観れる(はず)。但し小津原理主義者ですと逆鱗に触れそう。なんつっても小津でロマンポルノですからね。
お話は、長男・幸一(下元史朗)の嫁・百合子(風かおる)が間宮家にやってくる。父は妻を亡くしてからというもの全然元気が無く、長女は事務職をやっていたけどつまらない人生に嫌気がさしてトルコ嬢(今でいうソープ嬢)に、次男は本屋で万引きをして警察の厄介になってしまう。そんな家族を百合子は温かく見守っている。やがて幸一がバーのママ(麻生うさぎ)に恋をして家を出ていってしまう。
お義父さんから、「もう幸一は戻ってこないから、実家に帰っていいよ」と言われますが、百合子は、「そんなことをしたらお義父さんは一人になってしまうので帰りません」という。そして、ラストシーンで、ゆり子は実父から嫁ぐ前に言われた言葉をいいます。それは、小津安二郎の『晩春』で嫁ぐ前に父と娘の交した台詞がそのまま引用されます。カット割りがあるので、台詞を全て憶えなくてもよかったのに、風かおるは、全て頭に入れてきたというから、そのプロ意識の高さには脱帽です。
付録の周防監督のインタビューで「この映画は、『晩春』で娘が嫁いだ先が、変態家族だったという発想からスタートしてます」とのこと。ですので、まずは、『晩春』と『麦秋』、『東京物語』はこの映画を観る前に押さえておきたい作品。しかし、小津調でポルノをやるとは(苦笑)。脚本が出来上がった時、周防監督は、小津安二郎のお墓に謝りに行ったとのこと(笑)。
『晩春』は本当にいい映画。特に娘を持つ親となると涙なくしては観れません。後先になりますが、『晩春』観たくなりました。
この映画、既にDVDも絶版となっていますので、観るのはなかなか困難。もし観たかったらお声掛けください。『晩春』も持ってますのでカップリングで視聴可能です。
お勧め、ですけどポルノに拒否反応ある方、小津崇拝者は観ない方が良いですね。
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