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「関東大震災」(新装版)

新装版 関東大震災 (文春文庫)
吉村昭著・文春文庫
1973年初版・1977年文庫初版・04年文庫新装版初版

 9月1日は防災の日。1923年(大正12年)9月1日11時58分に起きた南関東を中心に発生した巨大地震をきっかけとした東京市横浜市を中心とした大災害である関東大震災の起きた日にちなんで、防災の日となりました。
 東日本大震災は、三陸地震によって発生した大津波による被害が大きかったですが、関東大震災は、起きた時刻がちょうど昼餉の準備をしていた最中で、火を使っていたことによる火災、それと当時は木造家屋が多いことも重なり、大火災となって下町を中心に焼死された人が多かった。
 震災の数年前に「今後50年以内に地震が起きる。その際は火災に注意」と、東京帝国大学地震学教室の今村助教授警告していましたが、人心を混乱させるということで上司?の大森教授に全否定される。結果は不幸なことに今村教授が正しかった。
 また震災では流言による朝鮮人虐殺が頻発したとして、この本でも全体の1/3以上を割いて詳細を検証していますが、全て流言飛語とは思えません。東日本大震災でも悪事を働く日本人がいたにせよ、多くは何処ともなくやってきた異語を話す輩だったとか。大半の日本人は外国人には異様に映るほど整然としていた。関東大震災を体験した、駐日フランス大使のポール・クローデルは外交書簡で「被災者たちを収容する巨大な野営地で暮らした数日間・・・、私は不平の声ひとつ耳にしなかった。唐突な動きや人を傷つける感情の爆発で周りの人を煩わせたり迷惑をかけたりしてはならないのだ。同じ小舟に乗り合わせたように人々は皆じっと静かにしているようだった」と伝えています。災害が大きければ大きいほど助け合いの精神を持つ日本人と、これ幸いに暴徒化して強盗、略奪をする国民性とは相容れないものだと思うのです。勿論、不心得者がいないとは言いませんが、日本人の根底には「お天道様が見ている」という精神が流れており、如何に金品を身に付けていようと、死体損壊までして手に入れようとする人はあまりいないと思います。当時の混乱を知らないので真実はわかりませんが…。

 すべてのインフラが破壊され、住のみならず、衣食すべてが灰燼に帰し、トイレにも事欠き衛生状態も最悪な状況というのは想像するだに恐ろしい世界です。そういう事実があったことは、心に留め置くことは必要。そういう意味で、いずれ、遠くない将来、同じような災害が起きるといわれている今、この記録文学は、ぜひ手に取って読んでほしい作品です。

 調べてたら、なんと、フランク・ロイド・ライトの設計による帝国ホテル新館(昭和43年新本館建設のため解体)の開館式は祝宴の準備中に関東大震災が起きたけど建物は無傷だったそう。ライトすげえ。

新装版 関東大震災 (文春文庫)

新装版 関東大震災 (文春文庫)