団鬼六というと、SM小説の大家で多くのSM映画原作を書いてる人ってイメージですが、80年末の断筆宣言から復活した90年代半ばに発表された賭け将棋師の話「真剣師・小池重明」以降ぽつぽつと一般小説(恐らくほとんどがの実体験に基づく私小説)を書き出す。
一時幻冬舎から旧作が復刊されていましたが、最近は書店からもあらかたの作品が消えてしまいました。この人の人生がまた破天荒なので自叙伝的小説、エッセイは抜群に面白い。
さて「最後の愛人」は、70を過ぎ鬼六氏の愛人となった20代前半のさくらさんとその死の話。70を過ぎてた鬼六氏は当然老人性陰萎、簡単に言うと要は”立たなく”なっている状態。そんな氏がさくらさんと知り合い、愛人契約をする。マンションを与え、車を与え、着ものが似合う顔立ちと思うと、高価な紬を与えたりする。更に鬼六氏は、マンションを与える際に「自分はこういう状態だから、肉体的に満足を与えることなど出来ないので、好きな人が出来たらどんどんマンションに連れてきてかまわない。その中で添い遂げたい人が出来たら遠慮なく結婚してかまわない。自分が仲人をしてやろう」ともいう。
自分の奥さんにも紹介し、2人は意気投合、自分が出かけているときに犬の世話や鬼六氏の世話をお願いしたりする奇妙な関係が出来る。
そんなさくらさんが死んでしまう。自殺だった。
死の理由を求める小説ではない。どれだけ、鬼六氏がさくらさんを愛でたか、その愛にさくらさんはどう応えていたか。さくらさんに先立たれて鬼六氏は何を想ったか。
プラトニックラブに徹した恋愛小説。
涙なくしては読めませんでした。
お勧め。(でも無双舎文庫ってほとんど見かけない…。)
- 作者: 団鬼六
- 出版社/メーカー: 無双舎
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 文庫
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